2000年代の中盤、わたしの心のベストテン第一位をキープし続けたあのサケロックの、いいたかないけどラストアルバムが発売されました。
- アーティスト: SAKEROCK
- 出版社/メーカー: カクバリズム
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: CD
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どうしようどこで買おう、とさんざ悩んだ割に、なぜか「発売日当日以降に発送」と明記されている*1タワーオンラインで予約したわたくし。フラゲ日に早めに会社を出られたもので、「わたし、怖いの……」と浅野温子のごとく*2、ない前髪をかきあげかきあげ試聴機の前に立ったわけです。
「一歩戻った」「歌を経たからこその新しいサケなのだな」というのが最初の感想。
わたしがサケロックに魅了された時期(『慰安旅行』発売後)のあの音の隙間をリズムで埋めに埋めるようなつくり*3は、徐々に少なくなって行って*4、アルバム『MUDA』に至っては8ビート主体の方向に3歩ほどすすんだなぁと感じていたのです。それが「一歩戻った」。
それから、「星野源」という「歌う人」を経てのこれだなぁ、と。しばらく「歌を入れる」曲を作ってきた後だからこそ、歌を入れる部分としてあけておいた部分をそのままあけておいたままでインストとして仕上げてらっしゃる!という印象を受けました。以前は埋めなくちゃ気が済まなかった部分をなくして、だけど埋めきらなくてもよい仕上げ方をもう知っているのです、と言われているような。……何言ってるんだろ、伝わりますかしら*5。以前だったらトロンボーンにもっとリズムを入れたりとか、リズムもメロディも複雑にしないと気が済まなかったんじゃないのかな、と思ったんです。『選手』のトロンボーンの大変そう具合とかを思い出していまして。聴きながら「ハマケンにやさしい!」とも思ったんですよね。
『MUDA』に感じていた、リズムを8ビートにしながら、音階のリズムで埋めていく方向から、ひとつ力が抜けて柔軟になったところに、歌う曲を経たからこそのシンプルながらもスカスカでない具合が体得されてこうなった、という印象。
最初に聞き終わった後にするっと「次に二歩戻ったとこ聴きたいなぁ!」と思ってしまってさみしくもなりました。
そして帰ってから観たこれ。
ああ素晴らしい。
考えてみれば、5人そろった新曲を聴くのははじめてだったんだ。
そして、久しぶりにSAKEROCKの映像を観て、ああ、サケのときの源ちゃんの目くばせ(というか視線のやり方)ってこうでしたねぇ!と新しい映像なのに懐かしく感じたりして。
何より素晴らしいのはラストですね。
ぐーーーーーっとカメラが上方に引いていく。
輪になって演奏している5人がずっととらえられている。
どこまでもどこまでも遠くに、広がっていく5人それぞれのこれからのようではないですか。
そして表情も終始緊張気味だった5人が最後の最後にほぐれるところまでとらえられていて。これからもこんなカンジで気負わずそれぞれ広がっていくんだろうな。
試聴した直後みたいに、なんとなく終わりを信じられていないところがあったのだけど、解散発表直後に「すごくいい終わり方じゃないか」という意見を目にして「そう、そうだとは思うんだ」とウジウジした気持ちがあったのだけど、この曲と映像の前で「あ、いい終わり方だ」ってすとん、と理解できたような気がしています。すごい説得力。
ちょっぴりさみしいけど、最後ってだけじゃなくて、新譜を生で聴けるというワクワクももって両国国技館に行けそうな気がします。
(おまけの追記)
アイチューンズに入れると、アルバムが『SAYONARA』→『SAKEROCKの季節』の順で入っているものだから、曲が『SAYONARA』→『慰安旅行(Demo Ver)』と続けて再生されるのですよね。終わりから始まりへ。アイチューンズのくせに粋なことする。