sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

読了

魔王

魔王

正確には「エソラvol.1」で「魔王」、「エソラvol.2」で「呼吸」を読みました。
巨大な力に対しての小さな力の結束と、その恐ろしさについて描いてありました。これまでに触れてきた伊坂さんの作品とは異なる印象。これまで読んだものは、話の構成があって、それを一旦ばらしてかちりかちりとはめていく印象があったのですが、この作品にはそういったパズル的な要素はなかったように思います。だけども、小さなものが気付けばものすごく大きくなることへの恐怖、またそれはほんの小さなきっかけから急速に起こってしまうということが、多くの側面から分かりやすく提示されていて興味深かったです。「25回折ると富士山の高さになる新聞紙」「サッカー選手が指された事件から、日本在住の帰化した外国人の家に火がつけられてしまう事件」「競馬で1/10の確率を全てあてていくと元手100円がどれだけ膨らむか」「規則正しくならんだ西瓜の種のおぞましさ」そしてドラえもんバイバインの話も。
実はほんのひとこと記されていたバイバインの例が一番「恐怖」という面では説得力があったりしました*1。そんなに読み込んだわけでもないドラえもんの中で最も印象に残っているのが「バイバイン」。おいしそうな(これ、作画がすばらしくおいしそうだったの)栗まんじゅうが倍に倍に増えていって、増えすぎて家から溢れちゃって、最後にはロケットで宇宙に飛ばすヤツ。

巨大な力に対する無力感、閉塞感、焦燥感がたっぷり感じられました。登場人物のとった行動、出した結論に対しては「そういう選択か」という感想を持つしかないのですが、自分に置き換えるのはとても難しくて、読み終わった後にもにゃもにゃと考えました。マクガイバー
伊坂さんの中にどういう衝動があってこの作品になったのか、という背景が知りたい。

*1:政治とかしらなすぎです