sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

LOVE 2009 obirin var./ 東京デスロック @ 桜美林大学プルヌスホール

演出:多田淳之介
出演:夏目慎也 佐山和泉 坂本絢 佐藤誠 高橋智子 堀井秀子 山本雅幸 井坂浩

ko-moto2009-06-14
2007年の初演はリトルモア地下だった作品。とっても評判が良かった覚えがあります。当時は、一番最初に見た東京デスロックの作品に対して感じてしまった「実験は家でやれ」な印象が強すぎたため観劇しませんでした。今年頭の「その人を知らず」で、その印象が思い込みであった=東京デスロック面白い!と心を改めたので、ようやく本日観劇にいたりました。


勝手に分けてしまうと(1)話さずに立ったり座ったり(2)話さずにダンス(3)言葉が叫びに変わる、の3つのフェーズで構成されているように見えました。

(1)の話さずに立ったり座ったりしているシーン。
沈黙もそうだけど、動きもほとんどない状態からスタート。最初1人だった舞台上には2人、3人、と人が増えていって、最終的には男女8名がステージ上に。ひとりひとり舞台上に現れるたびに、無言のうちに関係性が生まれてきて、それがパントマイムではない所作で表現され、視線の雄弁さを感じ取ったりしてぞくっとしたり。一人が立つともう一人も立つ、全員立っている中でひとり座っていると、やっぱり自分も立ってしまう。日本だなぁ。ぱっと感じたことはそれでした。そしてものすごく嫌いで使いたくない言葉のうちのひとつ、「空気を読む」ということについてひたすら考えました。特に就職活動のときに、それまでの学校生活でやたら求められてきた「協調性」と、就職する段になってやたら求められるようになった「個性」についてひたすら考えたことを思い出しながら。

(2)の無言で行われるダンス。
開演直前に「最近のライブでよく感じる“楽しまなきゃ損”なノリ」について話していたのだけれども、それを「なんてタイミング」と感じてしまうような内容でした。(1)ではほがらかなままに存在してた所謂「協調性」が「強制」に変わってくる様子。「楽しまなきゃ損」「楽しんで当たり前」「楽しめ!」みたいな。携帯の「つながっていたい」感もそうだけど、その絶対的な肯定っぷりにぞっとしたりする。そういうところを描かれててきっちりしてんなあ!て思った。

爆音はこないだの公演に限らず、よく行われることなんですね*1
このパートでは佐山さんばかり観ていました。こないだの公演や、これまで客演していた作品でもそう感じたですが、彼女は特別美人ではないと思うんですけど、動いたときにものすごく魅力的に見える。いや、正確に言えば(1)の動きの少ないパートでぼうっとたっているときでもそう。ただそこにいるときも、生命力はちきれんばかりに動いているときも芯の強さを感じてひきつけられます。


(3)の言葉と叫びのパート。
このパート、なんであるんだろう、と考えながら観てしまいました。客席に向かって8人の大声が発せられると、物理的に耳に衝撃が。いたい。ここまで体で作られてた張り詰めた空気がゆるんでしまったように感じました。ゆるんでしまった、というと違うかな。ぴんと張っていた糸が切れた結果の爆発ではなくて、「こういうことをやりたかったからやってます」みたいな、作られた爆発に見えてしまったように思います。うん。そこまでどっぷりつかることができていた作品の世界の一番手前に作り手の顔と欲がどばんと提示されてしまったような。そんな印象。ここまでのパートに対する自分の感じ方が作り手の表現したい内容とすれちがってしまっていたのかもしれない、とは思います。
アフタートークによると、このパートは初演にはなかったそう。なるほど。個人的にはアフタートークで語られた初演の終わり方の方が好きなような気がします。


全体的にはおもしろかったです。無言の表現が結構好きなのかな。思い出していたのは、初めて多田さん*2を観たポツドールの「ANIMAL」でした。あれも無言劇だった。観劇後にお会いした方も「ANIMAL」のことを言っていて、おお、とか思った。評判はよろしくなかったようですが、「ANIMAL」好きだったんです。その後の「夢の城」も。

それからチラシがちょうかわいい。

*1:アフタートークで爆音について触れられたのですが、それは当たり前のことであるような印象のトークが行われていたので。昨日はしょっぱなでアンプがとんだそう。

*2:俳優として出演されてました。