sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

夢の城 / ポツドール @ THEATER/TOPS

マチネ。
ネタバレしまくりなのでたたみます。


いつものように岡村ちゃんの「Sex」各バージョンをながしつつ開演。シングルになったスタンダードバージョンが流れ始めると「お、いよいよか」となるんですよなー。

トータルとしては「夢の城」というタイトルだけど、衣食住、性欲食欲睡眠欲すべてが満たされているけど夢だけはないよ、という場所を描いていたように思いました。

今回はセリフは一切なし。役者さんから発せられるのは、セックスにおける荒い息と喘ぎ声、なぐる時のふんばる声、いびき。あとはテレビの音。
幕に「AM2:00」が表示され、幕が上がった直後には目の前にベランダと窓*1。その向こうにワンルームマンションの一部屋。BGMは遠くを車が走る音。車の通行の多い通りに面した一部屋を観客が覗き見しているかのような設定だと示されました。その後のAM9:00(だったかな)以降はベランダと窓はとりはらわれて部屋のみが見える状態になりました。あとは彼らの1日半程度の生活がただ描写されました。ゲームしセックスし食事しふざけあい飲みに行って深夜に帰ってくる。

無言劇であるという点では前々作「ANIMAL」を思い出します。決定的に異なるのは大音量の音楽がないことと事件がないこと。ANIMALは事件が起きる前後の皆様の様子を描写していましたものね。
それで今回観ながら思い出していたのは、チェルフィッチュの「目的地」のパフォーマンストーク。三浦さんと岡田さんで「リアルとノイズ」について話していた中で、三浦さんは「写実的に風景を描写する」という発言をされていました。今回の公演は、そこをつきつめたところで登場人物の虚無感を描き出す試みなのか、と感じました。レビューでは「こんなのリアルじゃない」とか「こんな生活してる人がどこにいるのか」といった意見をよく目にしましたが、三浦さんにとってリアルであるのは「情景」であって「設定」ではないからこうなるんじゃないのかなぁ?というのがこの公演における「リアル」についての私の意見。

ゲームをし続ける男、テレビを見つめ続ける男、クッションでフルスイング/シコふみ/スピードスケートなどのスポーツまねっこ描写、ピアノ、そしてかきこむような食事のとり方*2。なんでもあるけどなんにもなくって。松本大洋「青い春」の雪男のエピソードも頭の中に浮かんできました。「雪男くんはなにになりたいの?」ってヤツ。
そして今回も女性はたくましくて。最後の安藤さんには共感*3しますが、ね。演技者。の2作も含めてこれまで観てきた三浦さんの作品はどれもこれも男が悲しく情けなくて女性はたくましくて合理的。女性特有の嫌らしさや不安定さを描いた作品は多いけど、男性の不安定さ*4とマザコン的でない女性のたくましさを描いているものはあまり観たことないような気がします。

かなり批判的な意見を多く目にしましたが、私は興味深く観ました。理解はできてないような気がしますが。

*1:ベランダには室外機。これ、下手側前方の人はステージが全く見えなかったんじゃないのかな。

*2:この食事のシーンよかったです。全員が急に積極的に食べ物に向かう情景がそれまでのセックス描写よりもよっぽど動物的で。

*3:この言葉もなんか違うんだけど適切な言葉が見当たらない……

*4:情けなさ、は結構あるけどさ