作・演出：野田秀樹
出演： 妻夫木聡 蒼井優 渡辺いっけい 高田聖子 チョウソンハ 黒木華 太田緑ロランス 銀粉蝶 山崎清介 藤木孝 野田秀樹
どこかでふと目にしてしまってたタイトルの意味。だものでそれを念頭に観てしまっていました。それがよかったのかどうか。「来た方から来たのよ」から重ねに重ねられたまたしてもな怒涛の展開と、その展開と帽子ひとつでさっきまでとがらりと意味を変えてしまった衣装に茫然とさせられました。ちょっと知ってたけどここまで茫然。
主人公が自分が何者であるかがわからなくなるくだり、先週観たリミニの「ブラック・タイ」を思い出さずにはいられませんでした。自分を定義づけているものは何であるか、名刺かみすぼらしいIDカードか、国籍か見た目か職業かDNAか家族証明か。そして、そういう「自分が何者か」がわからなくなったときや、「自分は果たして間違っていないだろうか」ってなったとき、頼る場所がないんだなぁ日本人*1は、だって無宗教だし、って思いが頭をかすめた瞬間、この作品を含めて「信じてみる三部作」であるらしいうちの1作「ザ・キャラクター」を思い出してぞくっとした。つながってんだこれ。
その「信じてみる三部作」、戯曲本として出版されてたのですね。「南へ」の掲載されている新潮を買おうとしたらオススメされて、観た後まで考えますーなんて言ってたら、観た後に茫然としちゃって、買わずにふらふらと外へ出てしまいました。読みたい。
それから、後方席だったので舞台美術全体も堪能しました。噴火の描写、そんなには豪華ではない、簡易なつくりに見える美術なのに少しのゆらしとドライアイスでここまで迫ってくるか！てびっくりしました。客席の上まで延びた赤い布が効果的だったなー。
役者さんは、妻夫木くんがすごく頼もしく見えました。「キル」のときとどうしても比べてしまうし、あれを経てのこれ、ってのが頭にあるのと、日本アカデミー賞受賞時の涙ながらのコメントを聞いたあとだからかもしれませんが。かわいらしいにこにこしたお若いコと思ってたのが、いつのまにこんなにたくましくなっちゃったの、なにそのギャップ……！て惚れました。遅い。
蒼井優ちゃんは声がハスキーで低くて、野田さん演出の女子はたいていキンキンするほど高いのにな、と思ってたらやっぱりつぶしちゃったんですねきっと。公演始まったころの感想に「声がキンキンしていた」という記述を複数目にしました。それでもにこにこと滞空時間を長く感じさせる跳ねっぷりで演じられてるの、観ていて楽しかったです。
（あとあれですね、先日の円形を思い出しながら会場を見渡して、「これが、これが普通だよ……」と安心したりもしましたよ）
*1:少なくとも私
