sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

スイングバイ / ままごと @こまばアゴラ劇場

作・演出:柴幸男
出演者:飯田一期 いしお 板倉チヒロクロムモリブデン) 折原アキラ(青年団) 菊地明香(ナイロン100℃) 島田桃依(青年団) 菅原直樹(青年団) 鈴木燦 高山玲子 能島瑞穂(青年団) 野津あおい 森谷ふみ(ニッポンの河川)

ko-moto2010-03-20
ままごと第一回公演、ってあれれれ「わが星」は?0回だったのかしら、「旗揚げ」は一回に入らないものなのかしら。

ともあれとにかく楽しかった。最前列に座っていたら、開演前の準備段階っぽい時間*1に出演者がわらわらと出てきて、社内報を出演者*2から手渡されて「あらここ池袋?*3」てなったり、「このわいわいとした手作り感には要注意です」とひねくれたりしている間に、なりひびいたのが伊藤大地ドラム。つづいて源ちゃんマリンバ。サケの「会社員」だったのですなー。曲に合わせて出演者全員が社内報をパスしまくるフォーメーション、これ一発でその楽しさにわくわくしちゃって、私はその気分を持続したまま最後まで突っ走って観てました。シーンとしては途中でしんみりしたりするんですけど、もう気持ちがGOGOGO!て突っ走ってた。そしてそういう風にぐいぐい引っ張ってくれたのも演出の力だろうし、そういう風にこの作品を観て幸せな気分になれたことをうれしく感じました。

というのも、ちょっぴりSFテイストな設定のこの作品、その「SFテイスト」にとらわれてしまったらたぶん楽しめないだろなって後から思ったんです。タイムマシンじゃないけど時間を行き来しようと思えばできちゃうし、しようと思ってないのに勝手にしちゃったりもする。さらに「会社=歴史もひっくるめた社会」としているのに、でも出社したりする。それなのに「(辞めるという意味での)退社」に「死」の匂いがしたりして。え、じゃあ出社は産まれるってこと?とか。1982年に行ってその社内報とってきちゃえばいいじゃーんとか。後から思えば設定にはつっこみどころばっかり。

だけどだけど、観ている間は「?」が浮かんできてもそんなの気にならなくて、まさに観ている方も加速=スイングバイしてしまったわけです。まんまとのせられた。ご本人が描きたかったことがそうであるかはわからないけど、私はこの作品から、そこですごす人たちの気持ちとか、長くつとめて振り返った時にはなんだかんだいってよかったことばっかり思い出しちゃうよね、って気分とか、そういうものを受け取りたかったから受け取ったんじゃないかと思う。逆にいえばその設定としての辻褄や、サラリーマンとしてのリアリティ*4の部分をいさぎよくばっさり捨てているってとこが痛快に感じました。そういうの捨てちゃうのってできそうでなかなかできないことだと思うの。

*1:ここからもう「開演」なんだけど

*2:板倉さんでした

*3:「農業少女」のことです

*4:いいことばっかりなはずはないし、現実はもっとシビアだしってあたり