sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

THE BEE 日本バージョン / NODA・MAP番外公演 @ シアタートラム

原作:筒井康隆 〜「毟りあい」(新潮社刊)より〜
脚本・演出:野田秀樹
出演:野田秀樹 / 秋山奈津子 / 近藤良平 / 浅野和之

ko-moto2007-07-07

何回も目にしていたのに、今こうしてチラシを見直すとぞくっとくるわ。とりわけ後ろに写ってる普通のアパートが。

善良で普通に過ぎるサラリーマンが、攻撃に対する反撃をきっかけに「普通」を普通でなくしいく過程、そして「普通でない」こともまた「普通」になっていく(日常化していく)そんな景色がシンプルなセットで4人という少ない人数で描かれていた濃密な1時間10分でした。
少人数であり、静かな狂気を描くお芝居は好みのものが多いみたいで、特に小劇場でそれなりに観てきたつもりでおりました。が、もうなんか「野田さんってすごいんだ……」って圧倒されてしまいました。あの、なにこのバカまるだし、なのにちょっと偉そうなコメント、て思うんですけど、でも、ダイレクトに来たのがこれだったのです。善と悪が入りまじって、どんどん加速していって次第に麻痺してしまうのね。そのコンプレックス具合が観ているこちらにまで伝染してくるように感じました。ぐちゃぐちゃになった出来事たちをならして平らにして「ああ、また普通になった」と思ったところで、一息つくまもなくもこもこもこもこ出来事が浮き上がってきちゃう感覚。
やっぱ「正しい」ことって怖い。「悪い」と知りつつ行われた怖いことより、その人の正義において「良い」と信じて行われた怖いことの方が怖いじゃないか。そしてそういうことって多いじゃないか。友達から戦争まで、そんなこと結構あるもの。自分だってきっとやってる。気づかずに。
「毟りあい」。今知りましたけどこの原作タイトルみて「はあ」とまた口をぽかんとするしかないです。まいった。

そんなわけで伊右衛門CM見てもちょっとこわいよ、野田さん。

戯曲が新潮7月号に戯曲掲載されてたのですね。英語バージョンのチケットも販売してました。ただあまりにも呆然としてしまっていたためそのまま何も購入せずに出てきてしまいました。テーマがテーマだけに英語バージョン観たほうがいいんじゃないだろか。高いんだよね……。そして観たらもう一回こういう状態になるかもですよね……。