sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

読了

夏の水の半魚人

夏の水の半魚人

三島賞受賞作品。
読み終わったあと、全体を思い返すと感じるのが、夏の雨上がりのむわんとしたしめった空気。さらに五反田品川近く、目黒側あたりの住宅街の中で暮らす子供の生活が落ち着いた調子の中でいきいきと描かれているものだから、具体的にイメージしやすい場所の効果もあって、ものすごく瑞々しさを感じました。
五反田団の作品と通ずるものがあるなぁ、ちょっとだけ方向性が違うだけで、という当たり前の感想も持ちました。子供が主人公、ということもあるんですが、この小説の方が色彩が鮮やかなイメージ。子供時代の夏休み、という独特な時間へのまぶしい思い出のせいでそう感じたのかもしれません。逆に通じているのは、大きな事件は発生しない、どこまでもひっそりと静かな空気の中に、確実に不穏/心配/悲しみの種がどこかには置いてあるところ。

子どもたちは夜と遊ぶ(上)

子どもたちは夜と遊ぶ(上)

子どもたちは夜と遊ぶ (下)

子どもたちは夜と遊ぶ (下)

ボリュームのある上下巻、一気に読んでしまいました。
正直、こういう安易に見える殺人を次々に起こすタイプのストーリーはあんまり好きではないので、のめりこんで読んだのが自分でも意外でした。キャラクターが具体的な知り合いのイメージにあてはまったってのが大きかったかもしれません。
ぜんぜんそういう要素はないんだけど、ちょっとお耽美っぽいとか思った。急な展開と知られざる衝撃の過去とちょっとだけ自己陶酔*1が香るあたり。
狐塚くんが会社のお隣の課の後輩君のイメージにがっつりあってしまって、読んでる途中で出勤した時に「あんた、妹さんが大変なことになってるわよ!」みたいな気持になったりしました。われながら頭おかしい。

ワタシは最高にツイている

ワタシは最高にツイている

小林聡美エッセイは気軽に、良い意味でひっかかりなく読めて、ちょっぴりにんまりできるのですき。ちょうど「かもめ食堂」の撮影をしている頃のエピソードも出てきます。
かもめ食堂」以降の小林聡美路線よりもこういうエッセイのような面をもっと出して女優活動してくれるとうれしいのになぁとかちょっと思ったりする。
厳密に言うと、大好きなドラマ「すいか」の頃からその片鱗はあったのかなぁ。小林聡美の活動に限らず、世間的な「ゆったり」「ほっこり」路線に辟易とし始めたのはいつごろだったかしら。「かもめ食堂」の次、……はなんだっけ。「めがね」?これの予告を観たときにはすでに「もういい……」て思った覚えがある。

*1:ではないんだけど