作・演出：三浦大輔(ポツドール)
出演：米村亮太朗 古澤裕介 岩瀬亮 白神美央 深谷由梨香（柿喰う客）【三浦大輔さんからのメッセージ】（三鷹市芸術文化センターMLより）
『人間失格』を読んで、「これ俺のことだ」と言ってる人を何人も知っている。
僕もその輩の一人だ。だからといって『人間失格』を舞台化しようなんて
おこがましいこと自分にできるわけがない。
『人間失格』は、なれるわけもないのに太宰に憧れた凡人達の、
文学のカケラもない物語です。
タイトルの「人間」と「失格」の間にはハートマークが入っていて、「人間失格大好き」って意味なのですって（これも三鷹市芸術文化センターMLより）。
「普通」がいちばんですよね、というそれはそれは木更津キャッツアイなお芝居でした。……うそです。
うーん、眠る前のシーンはメリハリ少なく、眠ったあとのシーンは……あれ、必要かしら。ちょっと、ちょっとだけ、「求められる三浦さん」をやってしまってるんじゃないのかなぁ？って思ってしまいました*1。ただ単に「夢オチみた〜い」って解釈してしまったからなのかもしれませんけれど。これまで、他の方の作品に比べていつも期待の水準値が高くって、そしていつもその水準を軽く突破してくれたうえにジャンプアップしてくれちゃってた三浦さんですから、うん。ちょっぴり小休止……、ああ、なにをえらそうに私は。
特に今回は、三浦さんが既存の作品をいじくった作品ということで、「ニセS高原から」を思い出してしまっていまして。そして私はポツドール版の「ニセS高原から」がものすごく好きだったのです。だから期待値がものっそ高かった、ってだけかもしれません。
変えてきてるなーと思ったのは、これまで景色中心に描かれていて、「人がいるけどしゃべらない」ことが多かったのに、今回は言葉が多くて、「しゃべってるのに人がいない」作品だったのです。だからといって景色を描いていないわけではなく、言葉の表情が多彩に描かれていたし、それによって目に見えている人の動きがちょっとずつねじれていっていっているという。そこが面白かった。
怪我のため降板された岩本えりさん*2、すごく好きなのです。ポツドールとチェルフィッチュで数回しかおみかけしてませんけれども。えっと……怪我ってもちろんあのシーン、で、ですよね。じゃああの役が岩本さんの役だったの？と一瞬思ったけど、あの役はアレですよね、「恋の渦」で古澤さんに紹介されてた彼女でしたよね。あらー、じゃああのシーンの稽古中にまきこまれちゃったってこと？あらー。まー。こわいわー（おばちゃん）。
そうじゃなくて降板に伴ってホンが書き換わったってことなのかしら。代役の方はワンシーンのみのご出演だったのです。
ポツドールで大好きなみせ方としてオープニングとエンディングがあるんですけど、前回の本多はエンディングがいつもの「作・演出 三浦大輔」幕じゃなかったのにちょぴりがっかりだったのです。そして今日はオープニング。開場中にずっとかかっている岡村ちゃんの「Sex」がシングルバージョン*3になって、Bメロあたりから徐々にクレッシェンドしていって、「君がどん！*4」でバシュッと本編が始まるのがんもうんもうンもんのすごく好きで、シングルバージョンがかかると「きた……！」ってわくわくしているんですけど。……今日そうじゃなかったねー。ちょっぴりざんねんでした。
あーでもネガティブなことばっか書いてるけど、今こうして考えてみるとやっぱ面白かったは面白かったのよね……。ニートなテーマと性のテーマが。金と女と太宰。「人間失格」を名乗るにも中途半端なそのダメぶり。極厚*5チラシの中にあった「腑抜け〜」映画のチラシに「夢ばかり語っていて何もしてない若者たちよ！さむいぞ！おもしろいぞ！」って書いてありました。方向も方法も違うけど、受ける印象は2作品ともこれなのかも。
（追記）暗転時にかかっていた曲は「How Insensitive」です（検索されてるみたいなので）。ジョビンの曲。「なんて鈍感な」って曲があの作品の合間合間に。ポツドールでかかってたピアノだけバージョンが誰のどのバージョンだったかまでは知らないです。知りたいです。なんか途中に「ふざけんな」みたいなセリフが入ってたりしたような。
あと、ちらりと目にした情報によると、私が観た回のバージョン（14日マチネ）はいまいち出来がよくなかったと三浦さんが気にされてた回のようでした。そうか。
