sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

8月6日

つい最近はったばかりだけど再度。


以下、文学界に掲載されていたこの映像最後のセリフ。たたみます。

……その電話は何事もなかったかのようにプツッと切れた。
でもその時電話の向こうで、十万人の人間が溶けた。


電話の向こうで人が溶けてあたしの耳に、声が残った。
石段に腰をかけていた人が溶けて、その石の上にその人の影だけが残ったように、あたしの耳に声が残った。
電話の向こうで十万人の人間が溶けて、十万人の声があたしの耳に残った。 
残った声は幻?
……このオイルが幻だというのなら、それでもいいの。
幻のオイルを補給して、どうしても幻の零戦を飛ばしてやる。
ヤマト、もう一度教えて。復讐は愚かなこと?
たった一日で何十万人もの人間が殺された。
その恨みは、簡単に消えるものなの?

一ヶ月しかたっていないのよ、あれから。
どうして、ガムをかめるの?
コーラを飲めるの?
ハンバーガーを食べられるの?
この恨みにも時効があるの?
人は何時か忘れてしまうの?
原爆を落とされた日のことを。
その翌日、歩いたその町を。
焼けて流れて爛れて溶けたあの町とそこに張り付いていた人影を。
そして、あたしの耳に残った、ヤマト、あなたの声を……


もしもし、もしもし………
天国があるというのなら、何故あの世に作るの? この世にないの。
どうして、天国が今ではなくて、アフターなの?
その答えを教えてくれたら信じてもいいよ。あなたのこと……
ごめんなさい。嘘ついた。
ほんとは助けが欲しい……あなたの。
聞こえていたら……返事して……神さま。