sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

桐島、部活やめるってよ

ko-moto2012-08-13

たまらん!だいすきだ!


「空気感」の映画だった。遠い昔だったから忘れてしまってた、でも確かに知ってる、あの教室の空気。机と机の間隔。仲間内で教室の一角に固まって話すときの空気、他のグループがすぐ近くで話しているときの聞こえてるけど聞こえてないように振舞う、そして話しているほうもそれを知ってるかんじ。廊下から聞こえる教室内の会話。眺める校庭、見上げる校舎。職員室の匂い。
それらが単に「懐かしい」でくくられるだけでなく、迫ってくるでもなく、目の前にクリアにぱんって広がってた。


原作を読んでいないのだけど、なんとなく「映画だからこそ」な見せ方をしてくれてるような気がした。言葉じゃなくて、映像で分からせてくれてるような。観る側を信頼してくれてるなーというか。


映画館ではおとなりに高校生カップルがいて、映画が終わったときに男の子が女の子にこそっと「あれ?なんか分かんないんだけど?」て言ってた。ああ、そうかもしれないな、高校生活が遠くあってこそかも。10年くらい経ってからもう一度観たあなたの感想が聞きたいよ。





最後の二人の会話、ほんとによかったな。最大限の勇気を振り絞ってみたけどやっぱりだめだった、だけど「やっぱそうだよな」っていつものことのようにひどく落ち込むでもなくカメラを拾った神木くんが、そのときどっちかというと勝ったほうに属するヒロキに向かってカメラを構えて、するっとほんとにそう思っているかのように「やっぱかっこいいねー」って言ったのがたまらなかった。そりゃ引き金にもなるよ、ぐっときた。

そしてそんな神木くんを眺めて、自分が空っぽであることに気づく器用貧乏ヒロキくんね。それをあらわす言葉や、そういう感情の存在は知ってるけど、初めてその感情に襲われたときのとまどいって覚えがある。「こういう気持ち切ないっていうんだろ」と「雷が鳴る前に」のワンフレーズが浮かんでくる。ここから、かつて所属していた野球部を眺めながら、よりどころである桐島にすがるようにTELをかけるラスト、そして青臭い主題歌*1。「見事だ……」て感嘆のため息ついた。(そしてその直後に上記のカップルの会話ね)

そして、そこに至るまでの描写が丁寧に、平等に、客観的に描かれていたからこそのこのラストだなーって余韻をかみ締めた。クラスの女子グループを眺める、野球部のいい顔のキャプテンと話す、キャプテンを眺める、吹奏楽女子がいつも背景にいる。

登場する方々がことごとくいい顔してましたね。特に野球部と「おっまたー」の彼。

WOWOWで特別番組が組まれていたのだけど、その番組で映し出された映画の撮影風景が、映画のというよりも出演している彼ら自信の青春ドキュメンタリーみたいですごくよかった。屋上で神木くんとヒロキが素で話している雰囲気がすでに映画の中のそれだったりして。神木くんを演技の先輩としていろいろ聞いてるヒロキくんに答える神木くんの様子がそのままだったりするから、そういう関係性が映画の中ににじみ出ていたのかな。


おふたりのインタビュー記事 http://www.houyhnhnm.jp/culture/feature/kirishima.html

*1:正直好みではないのだけど