sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

-宮澤賢治 / 夢の島から - @ 都立夢の島公園内 多目的コロシアム

「わたくしという現象」 /構成・演出:ロメオ・カステルッチ
「じ め ん」 /構成・演出:飴屋法水

ko-moto2011-09-17
F/Tオープニング委属作品。


2051年、ぼくはいつの間にか50歳。
昔あそこに小さな島がありました。
いまはもうありません。
だってそれは夢だったから。


未来を描いた映画のまさにその年に生まれたコーネリアスの子供は、
昔は海だった、塩とゴミでできた地面を掘る。
同じ地面の上で、芝生をさくさくと歩いて、高いなぁって空を見上げて、ぐいぐい動く雲と照明も通り越して見えてる星をながめて、そこに浮かんでいるのはエノラゲイなのか原子爆弾なのか。こうもりがばっさばさ飛んでて。
夢の島」ね。
なくしちゃうのかもね、
こんなにきれいだけどね、
だってそれは夢だったから。


細っこいコーネリアスの子供*1が地面をほって、小さなちからで塩やゴミを投げている後ろで、飴屋さんが猛烈な勢いで砂埃をあげて地面を掘り返してました。「わたしのすがた」の校庭に掘られた巨大な穴と、あのとき感じたよく冷えた針がすうっと刺さってくるような感覚を思い出しながら、同時にキセルの「君の犬」が頭の中でリフレインしてました。「掘っても掘っても指先に触れてくるのは柔らかな思い出ばかり」。いま改めて調べたら、直前の歌詞が「夢の浜辺に埋めましょう」。


毎度ながら、感じたことを言葉にするのが難しい。
ただ、いま、あの環境で、この作品を観ることができてよかったってことだけは力いっぱい言えます。


前後しますが、上記に書いたのは、後半に行われた飴屋さん作品についてのもの。
最初に行われた*2カステルッチ作品、入場から作品が始まってました。入場時に白いビニールで出来た、棒の長さが2mほどの巨大な旗が手渡される。足元のライトに誘導されて歩いていくと、同様の棒を腰の位置で水平に横に持った、白いビニールをかぶった飴屋さんの姿が。そしてその飴屋さんに先導されて、トータル2000人以上いたらしい観客がコロシアムの外周を円になって歩く。歩いているうちに誰ともなく、閉じていた旗を開きはじめて、しばらくすると全開にする人がほとんど。白い大きな旗を掲げた2000人以上の行列。怖かった。だって誰も指示してないのに。旗を持ってあるいているだけで、いつのまにか何かの意思を持って集められた集団のように行動してしまう人がこんなにたくさん。コロシアムの外周には大きな木がたくさん植わっていて、「その木なんの木気になる木」のイメージでいいんだけど*3、その木が白い光に照らされて、白い旗で埋め尽くされた視界の間から、狂い咲いた桜のように見えるんです。足首まで埋められてしまう高さの芝生と、狂い咲いた桜と、大量の白い旗。そしてコロシアムの向こう側で、もの言わぬ指導者(飴屋さん)が大きく旗を振る。周囲の旗も同じように大きく揺れる。恐怖を感じて前を見ると、その指導者含めた光景があまりにも美しくて美しくて、ぞっとした。ぞくっとした。


宮澤賢治とのつながりとか、
夢の島と水爆実験とのつながりとか、
背景を調べるととても深そうな作品。


ですがあまり調べず、観て、直後に感じたことだけメモしてみました。ものっすごく綺麗で、綺麗過ぎて、いい夢なんだか悪夢なんだかも分からない、そんな夢からいつまでも覚めない感覚が残りました。

*1:まさにコーネリアスの子供、小山田米呂くんが演じられてました。

*2:上演というよか行われた、というほうがしっくりくる

*3:のっけた写真の木ですね