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「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

NODA・MAP番外公演 表に出ろいっ! @ 東京芸術劇場 小ホール1

作・演出:野田秀樹
出演: 中村勘三郎 野田秀樹 太田緑ロランス黒木華ダブルキャスト

50代男性二人(と若き女子)が疾走する1時間20分でした。
噴き出る汗をぬぐう暇もなく膨大な量のセリフをまくしたて舞台狭しと*1動き回るお三方。そりゃあ喉も渇くでしょう、と納得の内容。これはこれ以上の時間続けるのはきついわなー、というか今の状態で1か月ほどやり続けるってのもすごい。そんなくらい動き回るコメディで、大声かつ大げさな動き、という普段の私だったら「ああ……」とひいてしまいがちな作風だったのに、素直に笑って楽しんでしまったところがすごい。
横席の一番前で観ていたのですが、手を伸ばせば届くほどの目の前に見上げる高さ(1mくらいかな)の舞台が組まれていて、その端の端まで使うものだから、「ああ、天才がいまこんなに目の前にいる」と何回も我にかえりました、ってヘンだな、でも我にかえってた。最前列は場所によっては汗やら唾やらあびますよ。

そしてただ笑うだけじゃなくて、途中から急にストーリーが自分に向けて近づいてきました。そんなもんだから、「明日の雨でこの暑さも終了」と言われている夜、外に出て生ぬるい湿気だらけの風をあびたとき、急にさみしいようなせつないような奇妙な気持ちになりました。同じ劇場で観て、同じ場所で放心した、「ザ・ダイバー」を思い出した、というのもあったかもしれません。
まあでも基本的には笑って笑って「すっきりしたぁ!」て作品だと思います。あえて沈みこまずとも。

ネタバレぽい内容はたたんだ中に。

(追記)WOWOWで12月に放送予定とのこと(「ザ・キャラクター」放送後の野田さんインタビューより)。「最近はテンションが高いことがあまりよいこととされていなくって、じゃぁこんだけあげてみろってね!」とにっこりおっしゃってました。ふふふ、観たあとだと「確かに」てにんまりしちゃいます。


犬のピナ・バウシュにアイドル「ジャパニーズ*2」、アミューズメントパーク「ディスティニーランド*3」。途中、歌舞伎座さよなら公演を思い出すセリフもありました*4
そして終盤にかけて出てきたキーワード「書道教室」をきっかけに、観た人は思い出さずにいられない「ザ・キャラクター」。照明も色を消すあの照明で、薬を飲みほすシーンはまさにあの美波ちゃんのシーンでした。元の衣装と美術がものすごくカラフルなので、照明の効果がハンパなかった。
あの「書道教室」、「ザ・キャラクター」観劇時は、実際の事件だったこともあって、どこか他人事のように観ていたみたい。そんな状態でも「うわっ」と思った「幼」の文字。あれを「お前だーーー!」ってこっちに向かって投げられたような気がしました。だってそれまで「わははー」と観ていた三人三様の大切な用事。他の人からみたら大したことないけど自分にとっては大切な用事。もう自分だってそうだもの。この作品を観に来ている人はみんな思い当たるんじゃないのかしら。そしてその「幼い」かもしれない用事のために全員が危機を迎えてしまうし、その危機の前では「幼い」用事なんてどうでもよくなってしまうの。ああ。スクール水着だ。

この作品の中では直接は触れられていなかった「幼さ」。ここのところの野田さんはそれに警鐘をならすべく作品を作っているように感じました。爆問学問に出演されたときも「幼さ」というキーワードが出てきてましたよね*5

連想したのは岡村ちゃんのこと。「電車の中で漫画を読む おやじぐらいの人を うぉーぁ*6、ダサいんじゃないのかなぁ?」


そして自分の体験としては、すごくつらいことがあって逃げるようにしてライブにいきまくっていた時期のことを思い出しました。それによって久しぶりだったり新しかったりする人間関係ができていったのだけど、それを喜ばしいと思うとともにかすかに「依存している」と感じていたこと。この記憶にびしっとぶつかってきました。そして言ってみればそのまま続いてきちゃっているいまの自分にも。描き出された幼さはまんま自分にあてはまる。


同じように、こっちに向かって投げられた作品といえば、ポツドールの「顔」ですが、同じ「投げられ」た結果として「自らのものとして衝撃を受け」たのに、ぶつかり方の違いが自分の中では如実に出ています。ふしぎだ。

*1:実際狭い。なんたって小ホールですし

*2:小さい男の子たち

*3:ネズミやら中の人やら

*4:野田版「鼠小僧」の中の海老さま結婚に関連したアレです。わしの眼は節穴ではない。

*5:もっとこのあたり番組内で詳しく語ってほしかった

*6:ここポイント