- 作者: 湊かなえ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2010/04/08
- メディア: 文庫
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2009年本屋大賞受賞作かつもうすぐ中島哲也監督の手による映画が公開される、という派手な作品。
賞賛の言葉をよく目にする作品だという印象と、それによる期待が大きすぎたのか、読み終わった瞬間に思ったことは「つるっとしてんなー」でした。
まず、あっ、とまではいかないあまり見ないタイプのとまどいを感じさせられることが多かったです。前の章での「A君」「B君」の実名は次の章でのどちらにあたるのか、とか。それが次の章まるまる読んでもわからない。ようやくはっきりする段階では「大したことではございません」みたいに扱われている。もしかしてこの書き方は故意に書かれている伏線とかじゃなくて単に稚拙なだけなんじゃないかとか思った。
全体的には、ストーリーもキャラクターも設定ありき、に見えました。最初の事件を設定しました、こういう登場人物がいて、この人がここでこう動いて……、と構成を紙に書いてその上でキャラクターというコマ*1を置く。そして一人一人について、その人ならではのキャラクターを形作っていくというよりも、作者の性格のままで「この立場にあったらこう動くのでは」という想像して、それがそのまま書きつけられたのではないかしら。そういう印象を受けました。
一昔前の「ジェットコースタードラマ」を思い出してたんですよねぇ。苦手でした。刺激的な状況が発生して、「こんなん起こっちゃったら楽しいんじゃん?」て作り手側の思いつきをそのまま出してない?キャラクターもストーリーも刺激的な状況だけにひっぱられて破綻してない?て思ってしまうカンジ。
文庫本の最後には映画化に向けての中島監督のインタビューが掲載されていて、曰く「この興味深いキャラクターを描いてみたいと思った」と。熱く。一瞬ええー?となったけれども、「設定とストーリーというガワだけが用意されている空っぽなキャラクター」なんて映画監督からしてみれば据え膳かも。真っ白なキャンバスに好きに命を吹き込むってことですし。思えば最初の先生の独白なんて北島マヤだったらどんだけのパターンの演技を繰り出しますか、って場面だものね。ああ、そう考えたら急激に映画観たくなってきた。
映画キャスティングについては、ウェルテルはチビT*2、お母さんは松原千恵子*3のイメージだったので、それぞれ岡田まさき&きむらよしのさんという線の細さ*4だったのにはちょっぴりびっくり。
よくこの本の感想として語られている「後味の悪さ」とか「復讐のえげつなさ」は感じませんでした。あっさりしてるとさえ。性格の悪いえげつないイヤンな作品に触れすぎてきているからかもしれません。でもやっぱキャラクターが一人の生きた人間であるように感じないから迫ってくるものがないんだろな。
つるっとしてて物足りなくはありましたが、おもしろくは読めました。一気に読みましたもの。さらりとテレビ番組を眺めるように楽しむのに向いているのではないかと……、ってなんか悪くいってるようになっちゃうな。
追記:ちょっと調べてみたら、作者はキャラクターについて一人一人の履歴書を作りこむ形でかなり詳細に設定を行っているそうです。なので、上記の記述はちょっと的外れかもですね。「履歴書」も作者起点の設定だらけのものなんじゃないの〜(ほじほじ)という意地悪な気持ちも浮かんできちゃったりもしますが、さすがに穿ちすぎかも。的外れながらも感じたことは感じたことなので、消さずにこのままあげておきますが、気分を害された方がいらっしゃったらすみません。
- 作者: 片桐はいり
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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図書館で予約本が来ていなくてふらふらと眺めていた書棚から借りてきた本。「特に乙女に評判がよかった本」というイメージがあったため、「どうしよう、ゆったりほっこりクウネル女子みたいな世界が繰り広げられていたら」と心配しながら読み始めたら、これがもう、ものすごく好みの本だったのでした。
グアテマラに移住した弟を訪ね、そこで出会った人や風景について、丁寧に暖かい視線で(でも時にものすごく客観的に)綴られています。
有名人のエッセイを読んでいると、時に邪魔に感じてしまう「作者の顔も声もおおまかなキャラクターも知っている」という要素がこの本では逆に良い方向にころんでいまして。ガラスのテーブルの話、トイレの話、風船でいっぱいの部屋に感激する話とそのコと仲良くなるまでの話。このあたりは「はいりさん」をイメージできるからこそより頬がゆるむエピソードだったのではないかしら。