sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

ソコバケツノソコ @ シアタートラム

ko-moto2010-01-17
世田谷パブリックシアターで企画されているダンスの単独公演シリーズ「SePT独舞」の「vol.20 黒田育世」としての公演。演出に飴屋法水氏。


正直、黒田育代さんは苦手*1。まだ2回しか観たことないけど、前回のHarajuku Performance、そして今回の「ソコバケツノソコ」を観てもまだなおそう思います。思うんですけど、それでもぐいぐいとひきつけられるものがこの公演にはありました。

パンフレットに書かれた魅力的なテキスト。そしてそれ以外にもところどころに挟まれる言葉の力が印象的でした。「花が咲きます」「クマが通ります」みたいな(たぶん全然違うけど、単純な「xxがxxします」といった分の羅列)言葉を繰り返し、絶叫ともとれる「踊ります」の言葉でダンスが再開されるときの心地よさ。途中で男性が出てきてラップのように激しくまくしたてられる「ずっと泣き続ける」のテキスト。飴屋さんのコントロールする音と、暗闇をもんやりと照らし出す照明と。そして黒田さんのまわりでは3歳のくるみちゃん(飴屋さんのお子様)が小さい動物のフィギュアをよちよちと歩かせながら自由に歩き回っていて。そこに「サイコシス」にも出演してらした外国の方、おばあちゃん、声のやたらかわいい女子、ラップのよにまくしたててた男子。決して激しいわけではない音と、色んな要素が入り混じって、パンフレットのファンタジックかつ少しグロテスクなテキストを思い返すと*2、水の中に沈んでいくような静かな息苦しさを感じたり。ああ「ソコバケツノソコ」だ。

一度照明がこちらに向かってものすごく照らされた時間があって。気付いていなかったけれど、黒田さんの生い立ちを語る声が流れていたとき、後ろで映像も流れていたのですね。気付かなかったよー。


そして過酷だったのは観ている環境。
「オールスタンディング」とチケットに記載されていたので、それならばとかなりピッチピチなスキニージーンズを履いてお出かけ。ライブみたいにステージに向かってスタンディングかと思いきや、入場してみたら、座席とともにステージとの境界までとっぱらわれて、体育館みたいなフラットな状態になっていました。中央には穴があいているので、中央で踊るらしい。そして客席との境界と思われるチョークでの印が床に直にかかれてまして。早い時間に入場できたので、チョークの印のすぐ脇で待っていたら、「最前列の方は座ってください」と言われまして。……ピンチ!座ると膝裏血管が圧迫されるスキニーなのだよ履いているのは、と思いつつ、体育すわりで何とかしのぎました。悲劇はここから。
体育すわりだと、下からものすごく冷えるのですね。腰痛がうずくとともに、開始30分くらいで猛烈な尿意に襲われまして。ちょっとトイレに抜けようかとみやれば、トイレに行く階段のあたりには人がみっちり。あー……、と後ろを見やれば私のすぐ後ろの方は立って観てらしたので、とりあえず中腰になってかかとにお尻をのっけるような姿勢に。ええ、日村さん言うところのヒールストップですわ*3。しかしこれをやると膝裏はさらに圧迫されて。しまいには足首から下がぼよんぼよんに腫れているかのような感覚になってきて。立ち上がったら即こけてしまうのではないかという状態に。しょうがないので一瞬体育すわりに戻って、立ち上がれる状態になってから、後ろにさがって立ってみました。公演終わった瞬間にトイレにかけこみましたよ、ええ。なので素晴らしい作品だったのに、すこし印象が「トイレ」と「しびれ」になってしまったのが残念。


アフタートークつきの回でした。
「ボロボロの衣装の方がいい踊りがでいるみたいで」「だから飴屋さんがいつも着てらっしゃったトレーナーを」って。うわあひどいな!すてきだな!(にやにや)
くるみちゃんはいつも稽古場にも来ていたので、くるみちゃんがいることが自然だったので、きわめて自由度の高い動きをしてしまう子供相手でも存分に踊ることができたそうです。
飴屋さんに対する質問で「演出プランがどうのこうの」というのが出たとき、相変わらず飴屋さんは「あんまり考えてない」「やってみてっていって良かったらそれで」みたいな受け答えをされていて、「ああ、それだから私は飴屋さん作品がしっくりくるのかもしれないな」って思いました。たとえばあったとしても演出の意図とか聞かないで観たいのかも。あの「私の名前はxxです」で観客の名前を言うところも、飴屋さんが思いつきで「やってみたら」って言っただけだそう。そこに意図を見出したくなっちゃうところだし、実際自分なりにそのことによって受けた印象/効果というものはあったのだけど、それが演出の意図とことなってても自分が受け取ったものが変わるわけじゃないし。「転校生」のラスト演出に自分が受けた印象と、飴屋さんの意図とが違ったと知っても、やっぱり受け取ったものは変わらないなーって思ったんです。

*1:黒田さんの踊りからは苦手な「体育会系」的なものをかんじてしまうみたい。ストイックさ、かな。

*2:実際ダンス中にも一度朗読されていました

*3:バナナ炎の該当会観た方だけ分かってくれればいいやい!