sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

思い出の本

一人の男が飛行機から飛び降りる

一人の男が飛行機から飛び降りる

上の本を読みながら思い出していたのはこの本。

中学生だったか高校生だったか、そのくらいの時期に手にとって、一遍ずつちょっとずつ読み進めた本です。いま手元にないんですが、いきなり「牛の体内に入る話」なんですよね。そんなややシュールな一遍1000文字くらいの、まさにショートショートなお話がぎっしりつまった本。
内容も思い出深いのですが、実はこの本を手に入れたときのことをやたらくっきりと覚えているのです。家の近所にある、個人経営の「街の本屋さん」。かなり規模は縮小してしまいましたが、今もものすごく小さい敷地で営業していて、そのひとまわり大きいキオスクくらいの小さいお店の中になぜかユリイカのバックナンバーがぎっしり置いてあったりするのです。この本を買った当時は今の4倍くらいの面積で二部屋に分かれていて、一方は雑誌や実用書や文庫、もう一方は文芸書でうめつくされていまして。初めての村上春樹村上龍山田詠美ブローティガンバロウズもここで買った覚えがあります。そんな本屋で長いこと平積みされていたのがこの本。シンプルでかわいらしい表紙につられて立ち読みしてみたらいきなり「牛の体内に入る話」で、しかもものの5分で読み終わる長さ。小さい頃に姉が背表紙が網みたいにぼろぼろになっちゃうまで読んでいたギリシャ神話の混ざった童話集*1を、胸の奥に感じる「ちょっと怖い」という気持とともにちょっとずつ読み進んだ感覚をありありと思い出したことを覚えています。数回、その本屋で数編を立ち読みした後、意を決して購入したのでした。社会人になるときに手放しちゃったんだ。なんで捨てちゃったのかなぁ、あの頃の自分。

実はこないだ下北のkate coffeeに行ったときに、置いてある本の中からこの作品の文庫本を見つけたのです。最初のページを開いてみたら、今も変わらず牛の体内に入ってました。当たり前だけどなんだか嬉しかった。

*1:この本がどういう本だったのかは未だに気になってます。あんなに読み込んでいたのに、姉も私もどんなタイトルでどんな編集のされ方をした本だったのか思い出せないという。