sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

読了

グロテスク

グロテスク

やー。タイトル「グロテスク」をちょくちょく確認しながらの読書でした。

正直途中まで、特にメインの語り手である「姉」のパートがつらかった。ストーリーの全体把握や動きとしてはこのパートが重要だし興味深く読めるパートなんだろうな、とは思うのですが、どうにもずぅっとあまり好きじゃない女性の愚痴とエゴを聞かされ続ける気持ちになってしまいまして。冷たいか。Q学園の描写に自分の高校時代を思い出したりしました。や、ぜんっぜん違ったけど。小学校からの一貫教育で下から来た人からヒエラルキー高めなところとか、お金持ちのコが多いところとか、制服にラルフローレン着たりしているあたりが。そっくりさ。私のお友達の場合は、あまりにみんながラルフローレンを着ているのを揶揄して、スクールセーターにラルフローレンのあのポロのマークではなくて、カタカナで「ポロ」と刺繍していました*1。わーだいすきー。そんな彼は今でもお友達。

「東電OL事件」をモデルにしている作品ですが、無限回廊http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/touden.htm)を読むと、後半のパートはかなりエピソード自体なぞって描かれているんですね。
ぱっと見「女性の悪意」によるエグさが目立つように思えますが、30代〜40代前半である女性の生きにくさが露悪的にこれでもかと描かれているように感じました。上記にも書いた高校のエピソードも、会社に入ってみれば「女性雇用」に新しさがあるがゆえにお試し的に採用されて認められにくく、後から入った女性のほうが制度が出来上がっていて無駄な苦労や、あきらめてやめていく人を見ることによる心の捩れを知ることもないという、「しょうがない」としかいいようのない世の中と自分のターニングポイントのバランスの悪さ。30代女性の生きにくさ(年齢が大きな要素であることも含めて)を、男性が(多分)「エグいな」と思ってくれる形で書き表している作品は、私は初めて読んだように思います。この作品は結論めいたものを出さず、淡々と作品の中における事実を描いたままで終わっているからこそ。売春にはしるまではいかないまでも、ここで描かれている学校生活や職場環境(特に“認められる/認められない”のあたり)のいかんともし難さは、今現在働いている女性の多くが感じたことのある種類のものだと思います。つか私は多分にあります。フィクションとして読むだけでなく、そういう目で読んでもらえるといいのではないかと思います*2。……あれ、愚痴っぽくなっちゃった。最初に「愚痴を聞かされ続けて好きじゃなかった」って言ってたのにね。

*1:本物を余裕で買える坊ちゃんだった

*2:とか言って、これを読んで理解を示してくれるような男性がいるならばとっくに今の働きにくさってなくなっているよね、とうがってみたりもするんですけど