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「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

文学界2007年11月号

文学界 2007年 11月号 [雑誌]

文学界 2007年 11月号 [雑誌]

枡野浩一さんによる松尾さんインタビュー部分を読みました。
この前の号の「岡田、前田、三浦+柳センセ」対談についてちょろっと触れられててにまりとしました。私もいくらセンセが心外でも、今の小劇場に足を運ぶ人のうち、大人計画きっかけの人は少なくないと思ってます。
ただ、この特集全体については「ああ、やっぱりそっち側の方が書いたこと」という印象をぬぐえませんでした。そりゃ特集組むくらいですから純粋に単なる観劇を楽しむ人間でなくて、取材対象となる人物側にすりよる必要があるのは分かりますし、これまで枡野さんが松尾さんと組んで仕事されているのは何回か目にしました。そこをおさえた上でも、あまりにも枡野さん個人に引き寄せすぎた記述およびインタビューなんじゃないのかなーと思いました。ご自身の見解があっているかどうかを松尾さんに確認する作業を見せられているような。文芸誌じゃなくて個人のブログを読んでいるような気持ちになったのです。そして私は文芸誌を読むときに個人のブログ感はいっさい求めていないんです。

松尾さんが映画をとる比較対象として「もとから映画を前提とした舞台作品もあって」「それをやらされている舞台俳優にとっても不幸なことなのでは」という文脈で、ヨーロッパ企画の「サマータイムマシン・ブルース」を挙げられてました。映画のみを観て書かれたらしいですし、誌面でも「両方見ても映画の方がおもしろいような気がするけど、両方観た方どうですか?」と書かれてました。さらに「実名を出さずに書くのもいやらしい」と前置きした上で記述されてました。
それでもやっぱりこの作品をわざわざこの文脈で引っ張り出す必要はなかったんじゃないかと思います。「知らないけれど」と前置きした上で憶測を書くくらいなら、調べて書いて欲しい。それは、掲載されているのがブログではなくて文芸誌だからです。ここでわざわざ他の作品を出してきて憶測で比較するならば、その行為こそがそれぞれの作品にとって不幸な取り扱い方ではないかと思うのです。
ちなみに両方観た私は舞台版の方が空間的制約がある分、おもしろかったと思ってます。でも「大好きなヨーロッパ企画がけなされてる!ゆるせん!」って気持ちでこの特集にいちゃもんつけてるわけじゃないですよ。

この前の号での演劇特集の対談も柳センセの独壇場っぷりに辟易としてしまった*1のもあって、「文学界」での演劇の取り扱い方が非常に残念になってしまっている印象を受けました。これ、あまり演劇になじみのない方が読んだらどう感じるのかなぁと思いつつ。