sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

ファイナルファンタジックスーパーノーフラット / 劇団、本谷有希子 @ 吉祥寺シアター

作・演出:本谷有希子
 出演:高橋一生 / 笠木 泉 / 吉本菜穂子 / ノゾエ征爾 / 松浦和香子 / 高山のえみ / すほうれいこ

ko-moto2007-06-24
前作「遭難、」をさっぱり受け付けられなかった私ですが、これは再演ということもあってか前作よりは楽しくみました。
けど既にチケット確保済みの本谷さんの脚本作品「砂利」以降はちょっと様子見にしようかな、という気持ちも大きく。というかこの気持ちはこの作品を観る前からかなり大きくなっていて、それを覆すまでには至らなかったのです。これは個人的な偏見もたっぷりなのですけど。


この後に観た「恋愛睡眠のすすめ」とは「妄想」キーワードでつながっていて、どちらの作品も男性の妄想世界を描いているんだけれども、やっぱりこっちは「女性が書いた」男性の妄想であるな、と。顕著だったのが、バイト後の大勢のユクを突き放したときのトシロウくんの反応が。「ああ、このカンジ知ってる」といいながら、どうにもうまくいかない状況にいらだって足を踏み鳴らさずにいられない描写。アレ、女だなって思った。

それから最後のあのベタベタなストーリー展開は、恋愛小説ばかり書いてきたすほうさん演じるゴーストライターちゃんの作品なんですよね?思い違いかしら。最後の方で、トシロウ+シマコとすほうさんの対峙する場面、二人が去っていくときにすほうさんが叫んだ「その女は×××よ!」が聞き取れなくて、あれは聞き取りたかったセリフのような気がしてしかたないです。
(追記)いろんなところのレビューを読んでみたら、あのべたべたな展開はどうやら現実だったらしく……えぇー?それまでの妄想世界(=ユク)への拘泥っぷりからするとあまりにも性急にすぎる展開じゃないかしら。えー、本心は「現実社会に逃げちゃいたい」だったからということ?そうだとしても、それだったらわざわざトシロウちゃんはユクになりたいとばかりにユクの扮装をする必要はないんじゃないのかなぁ。せめてその部分だけでも、これまでにこだわりつづけていた妄想世界への未練を見せたかったのかなぁ。えー、でも「生身」で「これからトシロウちゃんに幻滅していくのかもしれない」シマコに即ついていって即ウサミミとってたじゃん。レーゾンデートルであるところのウサミミ。妄想世界のメタファーであるところのウサミミ。ええー、あれ現実として描いていたのか……。えー。

全体的に病んでるカンジというか、一途にユクを思っている、と思っている男の形骸化しているようにみえる儀式とか、集められたユクがみんな心を病んでるっぽいところとか、そもそもシマコのナルコプレシーとか、「ああ、そういうのもういいって」と思ってしまうような設定だったのですが、ネクタイ締めて現実社会に出て行ったトシロウが実は妄想世界よりもいきいきしてたくだりがよかった。こういうひねくれ方が好みです。

役者さんはやっぱり吉本さんが大好きだと思いました。すほうさんにとられっぱなしの切なさといらだちがね。しっかしホントに「オレがいなきゃダメになっちゃうだろ、アイツ」ってセリフには出くわすたびにカチンとくるぜ、ギー!