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「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

東京原子核クラブ / 俳優座劇場プロデュースNO,72  @ 俳優座劇場

ものすごく丁寧な脚本で長丁場2時間50分、全く飽きずに観ました。戦前から戦争に向かっていく日本における物理学者たちとその周囲を描いた作品。物理学者というからには、第2次世界大戦においては「原子核」が大きく関わってくるわけで。そんな重い重い時代背景において、戦争の縁の下の力持ちとなってしまうような立場の人が多く出てくるのですが、あくまでも描いているのはそれぞれの人間でした。当時の人たちの戦争との距離感を私が分かるはずもないのですが、もしかしたらここに出てきた人たちのように接していた人たちもいたのではないかしら、と自然と思わせられました。
ラストシーンがものすごくよくて。それも含めて小飯塚さんが非常に魅力的でした。
オススメしたい気分ですが、本日千秋楽。いいものみせていただきました。

作=マキノノゾミ 演出=宮田慶子
出演=田中壮太郎・石井揮之・千葉哲也・小飯塚貴世江・西山水木・田中美央・坂口芳貞・檀 臣幸・佐川和正・渡辺 聡・山本龍二・佐藤 滋

(公式よりあらすじ)
 1997年、東京国際フォーラムの柿落しとして上演された『東京原子核クラブ』。好評を博し同年の読売文学賞も受賞しています。この名作を、青年座公演『MOTHER』・『フユヒコ』・『赤シャツ』と手掛け、マキノ作品の魅力を知り尽くしている宮田慶子の新演出で上演致します。個性溢れる俳優陣を迎え、青春を謳歌する若者の姿と戦争に突き進んだ国の歪みを炙り出す、この夏注目の話題作!! ご期待下さい。
   
 昭和7年、東京本郷にある下宿屋「平和館」。理化学研究所に勤める若き物理学者・友田晋一郎は、研究所のレベルの高さに自信を失い、故郷の京都に帰ろうとしていた。また同じ平和館の住人・富佐子も、レビュウで踊っていたのだが若い踊り子に人気を取られ、失意のなか東京を去るところだった。そんな折、理化学研究所の同僚・武山が、友田の提唱した物理学上の仮説が主任の西田に認められたという朗報を伝える。友田はあらためて研究所に残る決心をするのだった。 下宿に住むピアノ弾き、新劇青年、野球に熱中する東大生らと共に、愚かしくも美しい青春の日々が始まる。だが日本は少しずつ戦争に向かって歩んでいた……。