sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

嫌われ松子の一生

六本木ヒルズで観てまいりました。原作未読。

出ているのを知っていたのに出てくるまで出ているのを忘れていたもので、「あら、なんだか今度のダメ男さん、殴ってるけど好みっぽい」と思っていたらそれが宮藤さんでした。「やぁ、宮藤くん、宮藤くんじゃないか!」と一気にカヲル化。あれは、ヤバい。

そういえば、下妻物語がティーン向けのカンヌの映画祭でグランプリをとったそうですね。その賞のこと知らなかった。下妻、ティーン向けなのか……。

公開されたばかりなので、以下たたみます。


コメディなんだろうとばかり思って観ていたら、全然コメディではないストーリー。これ、原作はきっともっと重くて救いようがないのではないかしら。大人になってから共依存のように、ダメダメ男と「それでもひとりぼっちよりはマシ」と付き合い続ける松子さん。幼少時代に、父親から愛されていると思えず、病気がちな妹をややもうらんでいることを表明した上で家を出たことがバックグラウンドになっていることがものすごい説得力。父親に笑ってもらうために変顔を繰り返すところなんて、明るく描かれていたけど切なくて切なくて。のちのちにダメ男とばかり暮らしてしまうのも、実は心の底で、父のようにある程度受け入れてもらえない男の人の方が安心して付き合えると感じているような気がしてしまいました。
香川さんのいう「つまらない人生」という、一人の人間の人生に対する評価の言葉にぎょ、とする。「つまらない人生」。こわい言葉だな。

でも見終わった後は、松子の一生って(結果からしてみれば、ではあるけれども)悪くないじゃない、とも思ったりしました。お父さんの日記の最後の一行にしろ、妹の最期の言葉にしろ、生前に伝えられなかったとはいえ、元の恋人には「神だった」と言われているし、甥には「会ってみたかった」「実際あっていたんだ」と思ってもらえているし。

中島哲夫氏については、下妻のときもそうだったのですが、好きだけど手放しじゃない感はあります。いや、素晴らしく興味深く見てはいたのですが、こういう演出にはどうしてもあざとさを感じてしまうところはありますし。AIさんとゴリさんがあまり好きではないせいだとは思うのですが、うん、そのあたりはちょっとだけ「もうわかったよ……」と思ってしまうところも。でもきっと重たいであろう原作をこの絶妙なバランスでポップに、でも軽くなりすぎずに仕上げているのはすごいなぁ、と感嘆しました(なんか急にえらそうだ。ちょっと恥ずかしい)。

んで、以下は小ネタというか演者さんたちのこまごま。

  • 谷原さんってば、谷原さんの谷原さんであるところを非常に理解してやってるカンジが素晴らしい。笑顔きら〜ん☆にTシャツインな仕草に、最後のマンガとしかいいようのない驚き顔。
  • ちらりな位置にすわりこんでるサモアリ小松さんにそのシーンは釘付け。ごめん、カンニング竹山さん、見せ場を。
  • 瑛太さん、最初のほうのダメダメ生活時のぼさぼさぶりがツボでした。そのあたりの顔つきがチェルの山縣太一さんに見えてしょうがなかった。どっちに失礼なんだか。
  • 劇団の「痛いよ」に爆笑してしまったら、笑ってるの私だけだった……。ごめんなさい。そうよね、レディースデーで女性ばっかだったのよね。
  • 中谷さん七変化。どれもこれも「これでもか」なキュートさ。一時期より少しふくよかにな帯ったのかな。それが嬉しいステキさでした。前髪くりんくりんの先生時代の美しさと、美容師時代のぐりぐりパーマの美しさと。まいった。エッセイ、すごく読みたくなってきました。
  • 荒川と筑後川、似てるかしら。私の知っている筑後川は20年以上前の筑後川だけど。
  • そんなすてきな状態みたことないよ、てなくらいの川沿いの星空。