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「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ / 劇団、本谷有希子 @ 青山円形劇場

http://www.motoyayukiko.com/index.shtml

すっっっっっごく面白かった! 明日の昼夜で終わってしまうので、行ける人は行くといいと思います。当日券もあるようです。

詳細はのちほど。

===(以下、11/16記入。ムダに長いです。)===

演技者。「激情」での伊達さんを見て「生でみたいなぁ」と思って調べて見に行ったお芝居。最初調べたときにでてきたチラシを見て、正直「あぁ、これかぁ」とちょっといくのをためらったりもしました。タイトルもそうなんですが、なんとなく自己顕示欲だけがひしひしとつたわってきちゃって見ていて「わぁーーかったってばよ」っていいたくなるタイプのものかなぁと思ってしまったんですね。でもまぁ、円形で3000円で日程あうなら行っとくか! 伊達ち〜ん♪ くらいのおバカな理由でおでかけ。

結果的にはどでかい拾いモンでした。「イケニエ」とってなかったら楽日も当日券で見たいと思ったほど。

いつものことですが、もう公演も終わっているのでネタバレ全開で。

お話はトラウマにとらわれた、自分を特別な存在と思いたい普通の女性の物語。
救いのないようで実は最後のシーンが救われるためのスタートだな、と感じられました。
自分を特別と思いたい時期というのは所謂モラトリアム世代なら思ったことが一度はあるのではないかと思います。それに自分ではどうしようもないトラウマとなるべく事件にあってしまうことも。その体験を人のせいにするのはすごく簡単だし、人のせいにすることによって作られる「可愛そうな私」にちょっぴり甘美になったりすることもできたりするもんだと思います。ラスト、トラウマの元凶であり自分に起こるうまくいかないことすべてをなすりつけるべくスケープゴートであった妹が、自分より一足先にモラトリアム脱出。自分の欲しかった「特別」の地位を手に入れた上に「お姉ちゃんは普通だって認めなよ、楽になるよ」と逆襲して去っていきます。そして、恐らく、旦那である兄の「特別な存在」であることを手に入れていることで優越感を感じていたであろう、兄の奥さんのマチコさんも、結果的には兄の「特別」の地位を手に入れていて、さらに「生きている意味、あっ、ない!」というアイデンティティを確立していることが分かってしまいます。これが、自分がマチコさんに対して「自分のせいで兄が死んだなんて、マチコさん自意識過剰なんじゃないの?」の台詞の直後に起こるんですよね。絶妙。
そんなタイミングでの恨みの人形と扇風機の再生です。おいてかれてる普通の自分を認めてこれから歩いていかなきゃいけないことが分かってしまったってことを表しているように感じました。「激情」でのラスト(あいやー、考えすぎてまだ書けてないですが)を思い出させましたが、ここで人形のみに負のパワーを炸裂させる、っていう行為は、自分の中の負の部分をある程度認めていると思うのです。だって今までの流れでいけば、すぐ横にいるマチコさんに攻撃の矛先が向きそうなものでしょう。「ウォーター!」な勢いでいきなり多くのことを分かっちゃったってわけでもないけどうっすらと「普通である自分」と「それを認められずになすりつけた行為に対する罪悪感」を知っているのではないかと思うのです。これからの葛藤を思わせる展開ではありましたし、現状はキツいままのラストでしたが、今後の希望は見せてくれているように思いました。

ホントにこれは女性の書いた話だなぁ。オフィシャルサイトで作者に妹がいることが書いてあったのを見てさらに納得。これは女の兄弟(ってヘンな日本語か?)がいる人とそうでない人では受け止め方がだいぶ違うのではないかと思いました。あるんだよね、こう、姉妹の間の羨望だの嫉妬だの、こう、独特の。

役者さんはとにかくマチコさんのかわいい能天気さがちょうどいい具合に機能してましたよね。シンジの心が「間が悪い」からだんだん傾いてくのがごくごく自然に感じられて見事でした。しょっぱなの過呼吸にどでかい紙袋から始まってUVカットの帽子やら初めてのお酌に喜ぶ姿や。さらにあのラブシーンのかわいいこと。「私があきらめなかったからシンジさんは亡くなったんです。今まで諦めなかったことなんてなかったのに」は切なかったなぁ。でもその直後に「滅亡しちゃえ!」っていいながら赤い封筒ちぎってたし。つえぇ。
お姉ちゃんと伊達さんは、んもう、下世話に行くよ! カラダがよすぎでどきどきだよ。なんすか、あの割れた腹は。Bomb!Cute!Bomb!は。

今回は座席がかぶったらしく、入場の時に席が変更になったおかげで、家の裏口として使用される通路のすぐ脇のかなりの前列でしたもので。役者さんってすごいぜぇ〜、な瞬間をいっぱい見せてもらいました。しょっぱなの、外にいる猫を見つめる妹さんのまっすぐな目ったらすごいな。1つのテーブルでご飯食べてるときくらい近い距離でいっぱいのお客さんが見てる上でのあの目ですかぁ。すげいすげい。菅原さんの「お、虫が」も間近でみさせていただきました。堪能。

「群像」12月号にこのお芝居の小説化したものが掲載されているようです。会場で売っていた分に間に合わなかったので購入できなかったけど読んで見たい。 → これ書いた後に買ってしまいました。ちらりと見たところでは、やはり小説はコメディ要素は控えめのよう。姉の内情もさらに詳しくどろどろに描かれているようです。これ読んだらまた見方が変わるかもしれません。

彼女が松尾スズキチルドレンとして語られていることは、お芝居を見たあとで知りました。そういわれてみればそう見えなくもない、くらいにしか感じなかったですが。演劇畑の方々には明らかに影響が見られるのですかね。