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「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

関数ドミノ / イキウメ @ シアタートラム

ko-moto2014-05-25

作・演出:前川知大
出演:浜田信也、安井順平、伊勢佳世、盛隆二、岩本幸子、森下創、大窪人衛、新倉ケンタ、吉田蒼

「ドミノ幻想」では、世界はある特定の人間を中心にして回っていると考える。
願ったことが必ずかなうドミノという存在がいる。
右か左か、進むか止まるか。二者択一の洪水の中、ドミノによって、行く末が決定されていく。
ドミノは思いの強さに比例し、スピードを上げる。
最も速いものは「ドミノ一個」と呼ばれ、願った瞬間に結果が現れる。
それは「奇跡」と呼ばれる。
2014 年春のイキウメは、新型の「関数ドミノ」をお送りいたします。

初演/再演とも良い評判ばかりを耳にしていた「関数ドミノ」、再々演の今回、プレビュー公演で初めて観てみました。


うん、ストーリーはやっぱり抜群に面白いや。


こういう物言いになってしまうのは、実はイキウメ作品は「面白いけど苦手だな」というのが正直なところなのでした。前回の観劇からずいぶんと時間もたっているから、前とイキウメも自分も変わっているかもしれない、何よりも再再演が実現するほどの作品であるわけだし、で観にいきました。

ラストの展開と演出すごかった。あんな怖いラストの暗転初めてかもってくらい*1。ぞっとさせられました。このラスト、今回から変更されてこうなったそうですね。
舞台装置と空間の使い方も面白かったな。あのラスト、あの場所に彼がいたからこその怖さもあったと思うし。どんな場所にでも変容できるぽかんとした空間だったからこそ。


でもやっぱちょっと、その秀逸なラストに向かう過程が、苦手でした。そうでなければ引っかかりも感じずにもっともっとこの作品を楽しめたのに、と思うと自分の苦手意識が残念です。

以下、何が苦手なのかつらつら書いているのでたたみます。逃げて!


イキウメの公演としては2007年3月以来の観劇でした。わたしのイキウメ関連観劇歴は以下のとおり。

2008/11 「オムニ出す / ハイバイ @ リトルモア地下」にて、前川さん脚本「輪廻TM」
2007/08/04 「ポンポン お前の自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン」/ ハイバイ @アトリエヘリコプター」にて、浜田信也さん出演
2007/03/17 「狂想のユニオン @ 吉祥寺シアター
2006/06/10 「散歩する侵略者 / G-upプロデュース @ SPACE107」
2006/03/18 「短編集Vol.1-図書館的人生- / イキウメ @ スタジオサンモール 」

  • 短編集「めちゃくちゃ面白かった!ちょっぴり苦手なタイプの役者さんがいたな」
  • 散歩する侵略者「すっっっごくよかった。脚本読みたいしさすが代表作といわれるわけだなぁ!」
  • 狂想のユニオン「うーん……?設定は好きなんだけど、やっぱり苦手なタイプの役者さんがいたな」

「苦手なタイプの役者さん」をよくよく考えてみると、「声を張る(声がでかい)」「話し方がすごく演劇っぽい。とくにセリフを言う直前のちょっとしたタメ。」「常時セリフを観客に向かってキメ顔で言ってる感」が苦手。てことは役者さんではなく*2演出が苦手なんですね。確かに「散歩する侵略者」もハイバイ*3も違和感なく楽しんでた。ハイバイなんて後から前川作品ということに気付いたくらいの違和感のなさだった!
そう気づいたので*4、イキウメの公演にはいかないようにしていたのですね。


で、昔と変わっていることを期待して本作を観たわけですが、うん、残念ながら苦手な感じは変わっていませんでした。この公演の評判を検索してみても、ほぼ絶賛の嵐ですものね。これまでのイキウメ公演もわたしが目にしたのは良い評判ばかりでした。そしたらあえて変わる必要ない。うん、そりゃそうだ。


で、今回観ていて思ったのは「苦手なのは演出だけじゃなくてテキストも」ということ。言い回しやふとした反応が翻訳口調に聞こえたり説明セリフに聞こえたり、演出意図を邪推させるあからさまな不自然さが多いように思いました。これまで自分が青年団系というか、観た人が「リアル」と言いたがる作品を好んでみていたせいもあるとは思います。


あの、わたし、この作品では「森魚」を魅力的に見せてほしかったんです。
「いいとこすべて持ってく全能の人」、もっとひょうひょうとしたチャーミングな人のほうが憎たらしく思うんだけどなぁ*5。そんなくせに弟の彼女とっちゃうとかズルい面が見えるほうが人間っぽいし怖いし、実はこの人すべてわかってやってるんじゃ?という疑いも持ちやすいように思いました。だってキャラクター設定だって「一番人気の塾講師」なんですし。

そこに象徴されるように、キャラクターに人間味が感じられなかったんだと思います。設定に基づいて人物が動いているように見えてしまった。
最後にひっくり返すためにそういう描き方をする必要があったのかな?と思いながら観たのですが、、今後の公演に生かすためのアンケート*6に「どのキャラクターに共感しましたか?」とあったので混乱しました。あえて、人間味を排除させたわけではなかったんだなぁ。


うーん。
じたばたしたい。
「合わない」でまた観なくなるというのも残念だなって思うんです。
何度も言いますがストーリーはものすごくおもしろかったから。

*1:ポツドールの「顔よ」も相当でしたけど違うタイプの怖さ

*2:実際、イキウメ作品で苦手だなと思った浜田さん、ハイバイの公演(「ポンポン〜」再演)では気にならなかったです。ちなみに「ポンポン〜」再再演で良々がやった「ファミコン持ってるお友達」役でした。

*3:「輪廻TM」は「短編集Vol.1-図書館的人生-」の短編のうちの1篇

*4:最初のほうはスケジュールが合わなかったということもあり

*5:わたしだったら、峯田とか民生とかのようなキャラクターにする

*6:プレビュー公演だったので