sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

夢の城-Castle of Dreams / ポツドール @ 東京芸術劇場シアターウエスト

作・演出:三浦大輔
出演:
米村亮太朗 古澤裕介 鷲尾英彰 井上幸太郎 松浦祐也 遠藤留奈 新田めぐみ 宮嶋美子

ko-moto2012-11-18

2006年初演作品の再演。再演までに海外公演を経てます。



パンフレットに記載されていましたが、この演目、今回で最後の上演になるそうです。
ポツドールの演目の中でもかなり好きな作品ですので、18禁(エロも暴力も)表現に拒否反応がある人以外は、ぜひ見に行ってほしいです。当日券しかないそうですが、ぜひ! 11/25まで。


まだ公演中ですのでたたみます。


(初演時のわたしの感想はこちら と こちら

初演時は「夢の城」というタイトルのこの作品、「漫画もお菓子もテレビもゲームもセックスもなんでもある、ここではなんでもできる、だけど夢だけはないよ」が描かれている気がして、あとからタイトルを思い出してぞっとしたものでした。でも、今回はなんだか、ほんとうにこの部屋が、ほんとうに「夢の城」なんじゃないかって思ってしまった。


「今」しかないような部屋。
いま漫画が読みたいから
いまセックスしたくなったから
いまゲームに夢中だから
いまお菓子がたべたいから
いまタバコがすいたいから
きみがどんなタバコをすっても
きもがどんな留守電きいても(……あれ?)


それでいまの願いだけはことごとくかなえることができる。
漫画だってあるしゲームだってあるし相手はいるからいつでもセックスできてごはんだって作ってもらえるしマヨネーズだって食べ放題。
それでいい、好きなこと、いま楽しいことだけやってればいい。


そんな中で獣のように本能のままに生きてるひとたちもきっと「幸せそうに見えたんだ だけどそうでもなかった*1」なんだ。つらくなって泣いててもそんなめんどくさい女は、ほかの楽しみへのきっかけとしてしか有効じゃない。


近年の三浦作品では、ダメな人間を描写したあとに「お前だー!!」てつきつけられるようなラストが多くて、今回の「夢の城」のラストもそうだったんだろうけれど、わたしには「ああ私は入れないんだな、夢の城に」という断絶(あるいは拒否)と、「(6年前にはあったはずの)夢の城はもうないんだな」という寂しい気持ちを感じてました。


演出について。
初演と比べると、コミカルな演出が増えて、舞台上のどこを見ればいいか、視線が誘導されているように感じました。
ムカデ人間ドラゴンボールアバター、ゲーム画面をたたく、潮吹き、マヨネーズ直食い*2。笑い声がなかなかの頻度で聞こえてきました。
セックスシーンについては頻度が高く、ドギツさも増してたかな。でも、以前何作品か続いた「一瞬だけ明転するセックスシーン」みたいにサービス精神が露骨じゃなくてよかったです。


そして、前作で顕著に感じましたが、もしかして三浦さんったら三浦さんのくせに優しくなってきてる(ひどい言い草)? ご本人が当日パンフレットに書かれているように年齢によるものもあるのかなー。



あと気になったこと2点。どちらもF/T(公共事業)かつ芸術劇場だからだと思いますが。

えっとね、岡村ちゃんの音量がちっさいよー!爆音の岡村ちゃんを楽しみに、「わたしの開演時間は開場時間です」と真っ先に会場に飛び込むのですが、うーん、物足りなかった。いつもは足元に振動を感じるぐらいの音量でかかっているので、その刺激も誘ってくる不穏な感覚を楽しめてたんですけども。今回はBGMってかんじだった。
それでもシングルバージョンでクレッシェンドする入りは同じだったので気持ちよかったですけれど。あと、エチケットバージョンで注意事項アナウンスが入るのが定番になってきたのかな。


もうひとつはラストのクレジット。
海外上演を経ての凱旋公演だから、というのもあると思いますが、タイトル→作・演→俳優さんクレジットと映し出されました。いつものように「作・演出 三浦大輔」で切り捨てられるように終わってほしかったなぁ、そこまでがポツドールだと今まで感じていたみたい。あと、初演では、タイトルを後から自ら思い出してぞっとする、みたいな観劇体験をしたので、タイトルも表示されなきゃいいのになぁ、という勝手な感想を持ちました。

*1:矢野顕子「Happiness」。映画「桐島、〜」でもこの曲思い出してた。

*2:初演から追加されてたあれこれです