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「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

ろくでなし啄木 @ 東京芸術劇場 中ホール


作・演出 三谷幸喜
出演:藤原竜也 中村勘太郎 吹石一恵

おともだちとおしゃべりしてたのを抜けて芸術劇場に向かったら、入り口近くでディーラーさんから電話。車検の日程とかたててたら、会場に入ったとたんにどう聞いても三谷さんと野田さんに違いない声が流れていて「かー、しまったーっ」てなりました。帰ってから感想を観て回ったら、既に観た方が「早めに行ってね」てたくさん言ってくれてたね。事前情報を入れない性分が裏目に出ました。直前のおともだちとのおしゃべりの中でも「藤原さんと吹石さんと……、あれ?」とか出演者を忘れている体たらくでしたし。ひどいです。しかも観終わったときには「勘太郎、ブラボー!!」てなっていたという。ごめんなさい。

「いま一番チケットがとれない大人計画」と巷で言われていますが、私の実感としては一番とれないのは三谷作品です。だもので片手で足りる数しか観ることができていない三谷作品、12月からまる一日ダラダラ過ごすお休みをとれていなくて、さらに早起きしたから疲れがピークの状態で観たのにもかかわらず、ぐいぐいひっぱられて全く眠たくならなかった。これじつはすごいことなんですってば、ああ面白かった!


前半で吹石さん演じる女性側から見たある出来事を描き、後半で勘太郎さん演ずる男性、最後に藤原さん演ずる啄木から見た同じ出来事を描く構成。後半に旅館2部屋の様子を描くのに、ふすま一枚隔てて手前と奥に2部屋を配置していまして。そのふすまの開け閉めだけで部屋の前後が入れ替わる演出が鮮やかでした。
前半に描かれた吹石さんメインの部屋がA、後半に描かれた勘太郎氏メインの部屋がBとします。前半はAの部屋のみで進行。後半になると、Bの部屋メインで進むのですが、前半に描かれたAの部屋の様子も並行して見せるのです。部屋のセットはふすま隔てて手前と奥に配置されていますから、Bの部屋で話した後でAの部屋に出かけていくシーンがあるのですが、この部屋の行き来が非常にスムーズだったと。Bの部屋で藤原氏勘太郎氏が話している間、あいているふすまの向こう側の部屋の吹石さんは前半に観た覚えのあるシーンをやっていたりして。話し合いが終わって2人がBの部屋を出てAの部屋に入ってくる際には、「2人、Bの部屋を出る」「ふすまをとじたとき、本来のふすまよりも余計に横にスライドさせる」「そこにひかえていた吹石さんがすっと手前の部屋に入ってくる。ふすまは吹石さんが入ったと同時に本来の場所に戻る」「吹石さんのいる手前の部屋に2人がふすまを開けて入ってくる」といったカンジ。……分かりにくいな?説明は分かりにくいですが、いま手前で見ている部屋がどちらの部屋なのか混乱することが一度もなく、かつ「おいおいおい」て思っちゃうような不自然さもなく。部屋が切り替わるたびになんだか楽しくなっちゃってました。


それから、勘太郎氏がえらいこと魅力的でしたー。くるくるくるくるよく動きよくしゃべる。お父さんが狂言でみせるあの愛嬌が引き継がれているのだなー!とか妙に感動してしまいました。ずるいところも含めて愛らしいったら。「あれは純粋なふんどしではない」というご意見目にしましたが、わたくしもそう思います。あれはブリーフ(前かけつき)だ。

ちなみに「えろいらしい」というウワサはウワサでした。


タイトルどおり、啄木はろくでなしだったわけですが、そんなろくでなしっぷりにこの本を思い出していましたよ。

ほぼ日ブックス#006 石川くん

ほぼ日ブックス#006 石川くん

この本でも、「ろくでなし啄木」でも、啄木のろくでなしっぷりって魅力的に見えちゃうんだよー(だめんずカミングアウト)。