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「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

ひふみよ 小沢健二 LIVE TOUR 二零一零年 五月六月 @ グリーンホール相模大野

13年ぶりらしきライブツアーの初日。9日野音ゲストをのぞけばホントに13年ぶりに人前に出るという「復活」とついいいたくなる日でした。

わたしは正直、小沢健二という人の大ファンではなかったし、いまも恐らく大ファンとはいえません。本当に心から待っていた人に対して「すみません、この程度の人間が観にいってしまって」と申し訳ない気持ちになってました。でも観たいは観たい!のでいそいそでかけ、そして観ることができてよかった!

これから行かれる方にひとつ注意するとすれば、「早めにお行き」です。まず開場時刻5分過ぎに到着したとたんに「いやーん」てクネクネするほど、何回も折り返してる入場行列。トイレすませて15分前から並びなおしてようやく入場。そしたらば普段はスルーするようにしている(きりがないから)物販にサンプルとして掲げられてるTシャツのあまりの可愛さに口ぽっかーん。並ばなきゃ!と目をやった先には2Fまでぱんっぱんな物販への行列。その時点で開演定刻まであと5分。諦めて席につきました。結局帰りも物販やっていて、2F席から出たら目の前に「物販最後尾」があったので買いました、Tシャツ。

ヘインズのよないわゆる「Tシャツ」なデザイン 3500円
 男性用グレー、緑(L、Mサイズ)
 女性用グレー(S、Mサイズ)
Vとスクエアの中間くらいの襟ぐりのロングTシャツ 5000円
 女性用ピンク、グレー(ワンサイズ)
 男性用グレー

だったかな。女性用についてはたぶんあってます。ヘインズTは洗うと縮んだりする関係でワンサイズ上のものをチョイスしなさいなて書いてありました。ホントは緑が欲しかったんだけど、さすがに男性用はSでも大きい。さらにヘインズ系のTシャツがものすごく似合わないので奮発してでもロングTシャツの方を買うべき!と瞬時に判断。ピンクとグレーを1枚ずつ買ってきました。あまりのかわいさに、昔から「オザケンやだわぁ」と言っていたママンが「それ欲しい」「母の日母の日」とかつぶやきはじめました。「オザケンですよ」と言っても「欲しい欲しい」の一点張り。これは入手が大変な貴重品なのですよ、といくら説明しても騒いでいるのでピンクを取られるのは時間の問題かもしれません。本日(5/19)さっそく着ています。絵のついたTシャツで出社するなんて初めてかも。

そしてそして、肝心のライブはといえば......泣けたッス。マジ泣けたッス。

始まったばかり、かつ、今回のツアーには特別な意味があるし、思い入れのある方も多いと思うので、以下はたたんでおきます。いまのところ拾ってきたセットリストのみですが、今後バッキバキにネタバレますので、これから観る方は以下はぜったいに読まないように!お願いします! (5/20 たたんだ中のネタバレ追記しました)




まずかっちょよかったのがオープニングの演出。13年間待っていたお客さんのおかえりなさいがたっぷりつまった拍手をさえぎるように突然の暗転。ステージ上には夜空に浮かぶ星のように点々とした照明のみ。そこで流れ始める「流星ビバップ」。歌声は聞こえど姿は見えず。そのまま歌い切り、次の「僕らが旅に出る理由」もいわゆる「1番」が終わってもまだまっくら。もしや、やくしまるえつこばりに顔出す気ないんじゃ……なんて思い始めたころ、演奏がぱたっとやんでコーラスのみの「遠くまで旅する恋人に」に入るところ、演奏がやんで声だけになる瞬間に一気に照明がついたんです。急な明転に「客電ついた?」て思うほど。そして音と合わせて視覚的にも生じたそのブレイクの気持ちよさといったらなかった。その気持ちよさの中で、わたし程度の好き度合でも「ホントにいるー!」てなったので、もうものすごく好きな人の喜びは大変なものだったろうなぁ。見下ろした1階席ではみなさんがようけはねとったー。


ライブは「よくわかってんなー」ていいたくなるよな1st、2nd中心のセットリスト。ときおり13拍子の演奏がはさみこまれ、そのとき朗読が入る。
曲を追うごとにこの「よくわかってんなー」な選曲ににくったらしさを感じ始めまして。そして朗読MCははさまれるけど「お久しぶりです」みたいなこと言わないんだな、らしいな」と思った直後に「ごぶさたしておりました……」て一言が入ったり、さらには(遠目でよくみえなかったけれど)感激して涙ぐんでいらっしゃる?てな一瞬もあったり。ああもう、なんかかわされてる感というか「なんだかんだいってどうせこういうの好きなんでしょ?」て言われている感というか。にくったらしい。それに加えて、MCに入る時やら歌いながらで差し込まれてるみんなそろってちょい踊ってるあたりとか、ごめん、正直このかわいさ、「ボク」な感じ、ちょっときもちわるい……(言っちゃった)。M気質からするとちょっぴりぞっとしちゃうそういう所作、表情。そしてさっきからの狡猾な憎たらしさ。ああ、あなた相変わらず!ぜんっぜん変わってないや!


そして朗読。内容が興味深かったのでおもしろかった。これが詩的な何かだったら一気に冷めていたところでしょうけれど。活動休止中の彼の著作などについてはほとんど知らないのですが、文化人類学的な、環境と人間を考える、という側面が多かったのでしょうか。「自転車に乗るとアジア人のスイッチが入る」「安全ボケという言葉があって、老人を安全な家に住まわすと、一見よく見えるけど、危険を察知する能力がなくなってしまうんだそうだ。それはひどくこわい」、そして「ひふみよ」について。「ひ、ふ、み、よ、いつ」これを倍にすると*1「2、6、8、10」つまり「ふ、む、や、と」。子音が同じ。「ひ、ふ」「み、む」「よ、や」「(い)つ、と」。昔の日本語はそれ自体が音楽であった。……そういうくだり。

この話に象徴されるように、このライブ、「日本」「日本語」にこだわっているように見えました。まずはタイトルが「ひふみよ」で。曲を始めるときのカウントも「One,Two,One Two Three Four」のところを「ひ、ふ、ひ ふ み よ」で始まるし。さらにこれまでの曲で使われている英語表記の歌詞が音の似た日本語に変えられていました。特に「ラブリー」はじきじきの歌唱指導があったので目立ってた。

「Can't you see the way it's a」=「完璧な絵に似た」
「Life is coming back 僕らを待つ」=「感じたかった 僕らを待つ」
「You've got to get into the moon」=「われらときをゆく」*2

という感じ。
それに加えて新曲の「シッカショ節」。「今から歴史的な瞬間が。爆弾投下します」みたいな前置きあってから演奏された曲。タイトルから分かるよに民謡風。日本。ソウルフラワーを喚起した方が多かったようですが、私は矢野さんを思い出してました。矢野さんファンにとってはこれはまったく爆弾扱いではございません。ちょっとやそっとのことじゃ驚きませんです。逆に「さみしいよ 会いたいよ そばにいたい 子猫ちゃん」みたいなこと歌われた方が。ダウトー!「子猫ちゃん」ゆうてもダメ!てなもんです。……話がそれました。そんな新曲、「節」であっても、ほんのりと甘めポップな香りがしていてすごく「らしい」曲でした。


それからいろんなライブと関係ないことを思い出してました。
まずは岡村ちゃん(最初の)(最初の?)復活のときのこと。今日、「今夜はブギーバック」でよりにもよってラップの部分、スチャパート、会場からの歌声でスチャの穴が埋められていて。しかも完璧。みんな完璧。すごいなぁ。おかえりなさいの気持ちの強さったらないな。岡村ちゃん復活のときは別の意味で*3歌声が観客によって埋められていたよね、そしてそれがえらいこと暖かかったよね。またこの雰囲気を味わうとは。
つぎに筋少ちゃん。「天使たちのシーン*4」が早々に演奏されました。そしてヒット曲連発のセットを聴きながら、こないだのライブでレピッシュファンにおおいに受けていた「新人バンドのテーマ」の一節、「新曲なんか聴きたくない、昔の曲をやってくれ」の一節を思い出しちゃって。
それからこないだ読んだ「告白」の中の一文。「どうして不良が更生するともてはやされるんだろう、ずっといい子で何も事件を起こさずにやってきた人の方がずっとえらいに決まっています」(うろ覚えです)。ごめんね、ずっとやってきたお猿な彼のこともやっぱりちょっと思っちゃったんだ。彼の方がえらい、と思ったってことではなくて。ずっとやってきた人はこの復活したからこその独特な暖かさを、自分に向けられたものとして体感することはないんだなぁ、ってちょっぴり切なくなっちゃったんです。


とかなんとかごちゃごちゃいいながら、「あれやってくれないのかー」て思いながらむかえたアンコールで「いちょう並木〜」のギターが鳴り始めた途端に全部ふっとんでたのしく笑ってました。幸せもらっちゃったなー!


■member
小沢健二 (Vocal+Guitar)

中西康晴 (Piano)
沖祐市 (Organ)
北原雅彦 (Trombone)
GAMO (Tenor Sax)
NARGO (Trumpet)
木暮晋也 (Guitar)
真城めぐみ (Chorus)
及川浩志 (Percussion)
中村キタロー (Bass)
白根佳尚 (Drums)

■SET LIST

  • 流星ビバップ
  • 僕らが旅に出る理由
  • 天使たちのシーン
  • 苺が染まる[新曲]
  • ローラースケート・パーク〜東京恋愛専科〜ローラースケート・パーク☆ラブリー(後に向けて一緒に歌うところを練習)
  • カローラ?に乗って
  • 痛快ウキウキ通り
  • 天気読み
  • 戦場のボーイズライフ
  • 強い気持ち・強い愛
  • 今夜はブギー・バック
  • 夢が夢なら
  • 麝香
  • シッカショ節[新曲]
  • さよならなんて云えないよ ※メンバー紹介
  • ドアをノックするのは誰だ?
  • ある光〜時間軸を曲げて[新曲]
  • ラブリー
  • 流星ビバップ(Ending)

(アンコール)

  • いちょう並木のセレナーデ
  • 愛し愛されて生きるのさ

*1:"ふ”の倍"4"は飛んでたよな気がする

*2:こうだったかな、自信ないです。

*3:ほれ、声が。

*4:カバーしている