sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

4.48 サイコシス @ あうるすぽっと

ko-moto2009-11-21

作:サラ・ケイン
演出:飴屋法水
出演:山川冬樹 安ハンセム 石川夕子 大井健司 小駒豪 グジェゴシュ・クルク 武田力 立川貴一 ハリー・ナップ シモーネ・マチナ 宮本 聡 村田麗薫

理解はできないけど確かに何かに感銘を受けました。


ステージ奥に表示されてて、時に発音される「A Long Silence」。それが象徴するように「音」が印象的な作品でした。
生ドラムで刻まれる音、鼓動のような低音のリズムは、ときにその大音量がゆえに座っているお尻の下から振動となって主張してきたり、ときにはかすかな音として遠くでなっていたり。意味を見出すのを諦めた死を象徴する言葉たちの土台として、確かな生命の音として響き続けていました。ピンポン玉の音は静かな訴え。虫の飛ぶ音の臨場感。


ビジュアルもすごかった。オープニングのあの光景は一枚の絵のようでした。思い出していたのはヨーロッパ旅行でたくさん観た宗教画たち*1。飴屋さん演出の「転校生」の誰もいない教室に対してもそう思ったんでした。絵のよう。
そしてあの生と死を分かつように置かれていた血の水槽。ショッキングな表現と同時に、水槽の仕組みがどうなっているのかを知りたい気持ちでいっぱいになりました。


観終わった後、この作品でなにを感じたのかはさっぱり言葉にできず、書いている今もなお言葉にできず、ただただあの表現がそのまま頭の中にスパンと入ってきて、奥深いところでうずいている感覚があります。死に向かうイメージだらけだったように思うけれど、だからといって救いようがないとも思わず。なんでしょう、これ。



「作者は鬱病で、この作品を書いてほどなく自ら命を絶った」という情報、それとやたらと聞こえてくる良い評判をもって、期待しすぎで赴いたこの作品。期待しすぎてまずいかもしれないと思っていたけど、なんだか思っていたのとは測るものさし自体が違う、ってカンジでした。素直に思ったのは「学生時代にこれを観ていたらえらいことはまっただろう」ということ。


ここ最近の僕だったら鬱だの精神世界だの狂気だのってモチーフがかなり苦手になりつつあるんだけど。そういう自分の状態も含めて思い出しちゃうのはこないだ観た、同じくF/T参加作品であるサンプルの「あの人の世界」。受けた印象がかなり異なるのはなぜだろうとつい考える。どちらも作り手や玄人*2ウケがものすごく良く、でもどんな記述を読んでも、自分が感じたことが言葉として落ちてこないこの感じ。うーん。
しばらくひきずりそうで、まとめられそうもないので断片的な雑感のままのエントリにしちゃいます。最近こんなんばっか。


知らなかったのですが、あの超ロングヘアの山川さん、CMに出られてたりもしたのですね。この音。ラストのほうによく聞こえるホーミー的なアレ。シンバル音以外はこの人が出してる。

Optrumと競演しておる。

*1:表現している内容は間逆っぽいけれども

*2:っていうのもなんですけど、批評家・評論家の方々