sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

愛の渦 / ポツドール @ THEATER/TOPS

脚本・演出:三浦大輔
出演:米村亮太朗 古澤裕介 井上幸太郎 富田恭史(jorro) 脇坂圭一郎 岩瀬亮 美館智範 江本純子(毛皮族) 内田慈 遠藤留奈 佐々木幸子(野鳩) 山本裕子(青年団)

ko-moto2009-03-14
ああ、やっぱりポツは面白いなあ!第2ターン始まるまでのあの探りあいのあたりなんて自分の顔がいやらーーーーしくにまにましているのが分かりまくっちゃって、今の自分、かなり下卑た表情をしているだろうと思うもののとめられなかった*1

どうしても初演と比べてしまうところはあって、正直初演の方がぐっときたんですが、それが作品が変わったからなのか自分が変わったからなのかは判断つかないです。
今回気になったのは、よりセックスシーンをあからさまにみせるつくりになっていたように見えたことです。そのことによって、初演のイメージを強くもっている私としてはバランスが悪いように感じてしまったのかな。ちょっぴり「そんなにサービスしようとしなくていいのに」て思いました。
まず2階の仕様が変わっていて。前は2階のベッド上が隠れるつくりになっていたので、ベッドの上の二人が体を起こしたときだけ姿が見えるようになっていたのに対して、今回はベッド上まで見えていてブラインド的なカーテンを下ろすことによって隠すつくりになっていました。そのせいで「ブラインドを下ろす」という「隠す」作業が必要になっていまして。ということは「ブラインドを開ける」という作業に「見せる」という意図を感じてしまうのです。それに加えて、「顔よ」のときもあったんですが、章のくぎりの暗転/明転に加えてワンシーンだけ、セックスシーンを見せるだけと思われる明転がありました。
それと女性のあえぎ声がすごく唐突。徐々に聞こえ始めるのではなくて、いきなりトップギア。聞こえ始めたと思ったら絶頂チックで。終演後にパンフレットの対談を読んだら女性キャストがあえぎ声を出すことについて語ってらしたので、ああだからあの力の入り具合か、とかちょっと思ったりしました。初演もこうだったっけ?と思い出そうとして思い出せない時間を過ごしました。あとラストも初演の方が好きだったなー。おおまかには変わらないんですけど、初演は店員さんが客席のほうを向いてティッシュ片手に呆然と立ち尽くしていたのが印象的だったのです。


……とまあ、おや?と思った細かいことをちまちまと書いてみましたが、やっぱりそれでもこのテキストと演出の絶妙さには大きな失望などあるわけもなく。特に最初のほうの言葉少なな時間から発していた同時多発的会話にはもう職人的なものを感じました。全てのセリフを聞き取れやしない状況にありながらもおおまかな内容と雰囲気は読んで取れるし、実際につい喫茶店の会話を盗み聞きするときなんてこんな感じですし。そういった状態から、セリフをがっつり聞き取れるシーンへの移行の仕方にひとつも違和感を感じないのって、普通に見えてものすごく大変なことだろうと思うのです。そしてそれがどうにも心地よい。いや、乱交パーティー会場を覗き見しているようなこの作品を観て「心地よい」って、アンタ、ねえ?なんですけど。
朝の光によるリセットっぷりは再演においても必見。



終わって最後のTOPSだとしみじみしながら階段を下りようとしたら、ものすごい勢いでソワレの当日券を待つ人が並んでいてびっっくりした。ポツのTOPSでの当日券はいつも最前列に座布団、だったのに、今日は最前列に入ってこなかったから「おや?」と思ってたんですが。大音量の岡村ちゃんを堪能しながらパンフレットに読みふけっていたので全く気付いてなかったんですが、どこに入っていたの、当日券の方。


おっと!あのカップルの女子、どっかで観たことあるよな気がする……て思っていたら、ポツ版「ニセS高原から」で看護婦やってた人だったんだ。まさに今、上記枠内の出演者を調べていて「青年団」の文字を観て気付きました。やーすっきり。

キャストデータ:

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初演(2005) 再演(2009)
フリーター米村亮太郎米村亮太郎
ニート仁志園泰博岩瀬亮
会社員富田恭史富田恭史
工場員古澤裕介古澤裕介
カップル男小林康浩美館智範
店長のツレ安藤玉恵江本純子
OL遠藤留奈遠藤留奈
保母さん岩本えり内田慈
学生小倉ちひろ佐々木幸子
カップル女佐山和泉山本裕子
店員鷲尾英彰脇坂圭一郎
店長青木宏幸井上幸太郎

(3/26追記)
あくまでも初演と比べると、ですが、今回の再演でガツンとこなかったのって、全員の雰囲気がピークに悪くなった後にフォローが入った殻のような気がします。初演に「学生がカップル男にセックスしてもらえなくて、泣いてニートを呼び出すシーン」「それをニートが参加者に話すシーン」「それを聞いた女子が“そういうの分かる気がする”というシーン」ってありましたっけ。なかったような気がする。ニートは学生女子に、「はぁ!?」て思い切り否定されてただそれだけだったんじゃなかったかしら。そのシーンがなかったから、OL一番人気女子の「また集まれると」発言の空々しさや、ニート君が強制的に発信履歴を消させられるシーンのこてんぱん加減、さらにそれをやった店員の呆然っぷりが際立っていたように感じるんですが……。単に初見かどうかのインパクトの違いだけかもしれないんですけど、ちょっと気になったのでメモしておきます。

*1:「顔よ」を経た今観ると、単純に笑っちゃうという意味での「にまにま」ではななく、苦々しい「にまにま」になっていることも頭の隅に浮かべつつ。