sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

三月の5日間 / チェルフィッチュ @ アカデミーヒルズ49 タワーホール(六本木ヒルズ森タワー49F)

作・演出:岡田利規
出演:山崎ルキノ 山縣太一 下西啓正 松村翔子 瀧川英次 村上聡一 松枝耕平

ko-moto2007-12-13

2006年3月、SuperDeluxeでの再演を2回観たこの作品。
また生で観ることができた、それだけで心は躍り、かつしっとりするのです。えーとね、今日の公演2回とも観たんだ、これが。

ムダにながぁ〜くなってしまったのでたたみます。


この作品を観るからには「あの」とつけたくなる六本木、しかも六本木ヒルズ。上演前にご挨拶された岡田さんは、挨拶の中でもパンフレットの中でもそのことに触れられていました。

言葉と身体のリズムのズレがあるからこそのグルーヴは、リズムのズレをさらに3次元的に分割したポリリズムなわけだ、と全く飽きない理由を見つけた気がしました。脚本とそれぞれの言葉の強度がある上にこのグルーヴをのっけて、さらに目の前で生の情報として全方位から攻めてきますから。あっさり気持ちよく白旗をあげます。DVDを観すぎるほど観すぎていて、今日もテキスト部分に関してはDVDとの違いを「お」と思ってしまうくらいには、「身体の柔らかいすずきくん」が登場したときに「やあ、すずきくん」と思うくらいには観すぎていて、それなのに新たにまた楽しいのです。出演者の瀧川さんがご自身のブログで「飽きないなー」っておっしゃってますが、こういうふうに言ってくれると追っかけてるこちらも嬉しくなります*1

DVDで観ているときにはそんなに気にならないのに、「小泉の犬め」というセリフを聞いて、改めて「ああ、そうかこの作品のころは小泉さんだったし、この作品を初めて観た2006年3月も小泉さんだったんだ」と認識しました。だからこそ、こういう5日間を過ごして普通の生活に戻ったら戦争が終わってるんじゃないかと語るシーンを観ていると、胸の奥、いや、咽喉の下あたりが少しひゅん、とします。4年前の三月の5日間が終わっても、それから4年たっても、もうすぐ5年がたとうとしていても戦争は終わってない。
この作品、戦争が終わった後に観たらどう感じるんだろう。
「逃げ出す」という選択肢を思いつきもできないくらいにいつの間にか何かを諦めて立ち居地を決めかねるこの気分は。そのときどこに向かいましょう。

DVD版とセリフが変わっているところもあって。ミッフィーちゃんへの相槌が皆無*2とか、「犯人現場に戻るみたいな」とか。
ミッフィーちゃんの所作や話し方の面白さは、仕事中に急にふられて人前で話している女性を見るたびに「あ、ミッフィーちゃん」と思ってにこにこするっていう楽しみ方もあるのですが、実は「火星に行きたい」くだりの妄想具合が大好きです。たまに自分でも思ってしまうことがあるけど、決して人には言わない類の考え、に近い、といいますか。これと似た印象を持っているのが、松尾ちゃんの「ドライブイン・カリフォルニア」*3での「一度きて自分に触れた波には、ひいていったあとにも自分の情報がほんのすこし含まれていて」とか「なんで自分じゃなくてこの人だったんだろう」、「クワイエット〜(映画)」での「自分で食べた分、他の1人が食べられなくなる」とかを思い出すのです。ついぼんやりと思ってしまっていたけど、他の人もこういうこと思ったりしてるんだ、ふつうのことでしたか〜、ってちょっぴり安心する感覚。

回によって笑いが起きる場所にすごく差があって面白かったです。DVDとも違いますし。「俺の本能すばらしい」のシーンでの笑い声の男くささに笑いました。偽名のところで笑いがおこったり、全くおこらなかったり。

この作品を生で観る最大の魅力はその場に一緒にいることを実感するような視線や身体の動き、あと、勝手に自分の視線を観たいところに移動させることができるところです。映像だとクローズアップされてしまう、「そのとき話している人」以外に視線を向けるのが楽しくてしょうがないです。ただ立ってたりするのに、なんかのきっかけで視線がうつろったりしているものだから。……って要するに太一氏でショ、あなたの観てるのは、といわれるね、はい、そうですね。はしっこに座り込んでいる太一氏は、急に猫っぽくなるもんだからもって帰りたくなりますね。「ポスト*労苦の終わり」のときも「目的地」のときも「座り込み太一」を堪能した覚えがあります。なぜか観てしまってたんですね。そんで「これって……恋?」とか思っていたんですね、いやむしろ庇護欲?や、持ち帰られないならせめて頭なでくりまわさせてほしいですね。あっ、どんどん発言が気持ち悪くなりますね。
しかし今日の太一氏はもしかしてちょっと体調悪かったんじゃないでしょうか。よかったんだけど、よかったんだけど、なんとなく。「湾岸戦争のときもピンポイントで」な発言のところの動きが変わっていて、前よりすこしつらいとか悲しいとかの気持ちが喚起されるようになっていたように思いました。

新しいアンミラさん*4は、これまでの東宮さんと全く違っていて、セリフの言い方動きもだいぶ違っていて(当たり前ですけど)、テキストとしては同じ言葉を発しているのにこうも違うものかーとびっくりでした。とくに犬のくだり。次回からは瀧川さんが出なくなってしまうんですねぇ*5。さみしいわぁ……。

あいかわらずいいたいことがまとまらない。ムダに長い。
ただ、じんわりとしみた気持ちを味わいながら帰途についたことだけは確かです。
良い日でした。

*1:よくヨーロッパ企画で言われている「再演だと役者のテンションが落ちる」っていうの、再演を観て喜んでいる私としてはちょっぴり複雑な気持ちになってしまうので

*2:小説版でのミッフィーちゃんへの冷たさが作品に持ち込まれた印象

*3:こっからの引用っぽい記述は全てうろ覚えで書いてるので、文言はまずホンモノとは違っています。

*4:松枝さん

*5:ご本人のブログより