sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

シュヴァンクマイエル・ナイト @ シネセゾン渋谷

シュヴァンクマイエルは「ルナシー」しか見たことがなかったのですが、もう今回の作品群を観てすっかりファンになりました。奇をてらいすぎない奇妙さといいますか、見てるとなんだかもやもやしてしまう加減がちょうどよくて。

Aプロ:
1.アリス(85分)

Bプロ:(計83分)

2.家での静かな一週間(20分41秒)
3.ドン・ファン(32分45秒)
4.アッシャー家の崩壊(15分40秒)
5.ジャバウォッキー(13分52秒)

Cプロ:
6.オテサーネク(132分)

Dプロ:
7.地下室の怪(15分20秒)
8.自然の歴史(組曲)(8分55秒)
9.部屋(13分05秒)
10.対話の可能性(11分45秒)
11.陥し穴と振り子(14分55秒)
12.男のゲーム(14分30秒)
13.闇・光・闇(7分30秒)

http://www.esquire.co.jp/event/2007/svank/

一気に13作品の上映会。短編上映のBプロ、Dプロの大半は眠ってしまいましたよ……*1。あんなにしっかり寝てから挑んだのに。こうやってタイトル書いてみると観たいの多かったのに。Bプロはドン・ファンの途中で記憶がなく、ジャバウォッキーの途中で時々目を覚まして「ああこれ観たかったヤツだよぅ」と思いながら気づいたら眠りに落ちているという悲しさでした。Dプロは自然の歴史で「蝶」の項があって、蝶がちょっと怖い私が目をつぶってしまったとき「あ、やばいかも」。次の「部屋」あたりで記憶がなくなり、「男のゲーム」の途中で目を覚ましました。「男のゲーム」が面白い映像だったもので、「何寝てんの、アタシ!」とアタシ起きしました。客層が若かった&ちょいゴス寄り、美大生風自意識高め女子が多かったので、つい「アタシ」ってカタカナで言いたくなりました。

それでもまっとうに観ることができた作品だけで大満足。

ヤン・シュヴァンクマイエル アリス [DVD]

ヤン・シュヴァンクマイエル アリス [DVD]

「アリス」はディテールが可愛すぎました。造型がまったくもってかわいくないうさぎやらかえるやらがやたら愛らしいの。ガーリーすぎず、奇をてらいすぎずのバランスが妙にここちいいしクレイアニメ的動きが不思議の国の奇妙さ加減の良いアクセントになってるなーと思いました。…とかいうのはつけたしで、単純にかわいらしいものがかわいらしく動くさまがたまらなく楽しかったです。かえるが虫を食べるあの舌のカンジとかそのぬめりや重みが感じられるようで気味が悪くて最高に面白かった。
DVD欲しいよ。
DVD欲しい。
欲しいなー。

オテサーネク [DVD]

オテサーネク [DVD]

「オテサーネク」は眠りかけてた目をばっちり覚ましてくれました。狂ってんなー。とにかく出てくる女性が全員強情で、男性はただ振り回されちゃうだけなのが人柄なのかお国柄なのか、おもしろいなと思いました。かなり本気で「この奥さん死ねばいいのに」とか思ってしまった。最後のハンカチ落とすあたりも、あれだけひどい状態になっといてまだそんなこと言ってんのか、そんでやけにあっさり夫を送り出すじゃないの、ンモー、って話の中の女性に本気で腹を立てちゃった。でもオティークが最初に動き出す授乳のシーンでのこのお母さんがほんっとうに美しく撮られてるんだなー。あれを思うと「ま、しょうがないのかもなー」ってちょっと思っちゃうの。うまいぜずるいぜ。
この中に出てくる童話「オテサーネク」は本当にチェコの民話なんですかしら。出てきた絵本の絵が、この作品に出てくる絵本としては最高にしっくりくるんじゃないか、という素朴だけどややシュールな絵でよかった*2
それにしてもゴハンのおいしくなさそうさったらびっくりです。なぜああなのかしら。チェコ料理のせい?シュヴァンクマイエルのせい?

あと「家での静かな一週間」は一週間同じパターンを繰り返した後に、ラストシーンがくる構成になっていたのですが、このパターンの途中で「ああ、宮藤さんだったらこのあたりで飽きてちょっと変えてくるあたりだわー」なんて思っちゃいました。比べるな。
それから「自然の歴史」。蝶の羅列に「げー」と思ってしまったのは事実なんですが、かなり面白かったです。鳥や魚などの図鑑に描かれているような図が大量に映し出される画面。緻密に書かれていて単純に面白かったです。1960年代の作品だったような。ラフォーレの展示会ではこれを想像上の動物に発展させたような図がたくさん展示されてました。

*1:関係ないけど、こういう映画のイベントに行くことがめったにないので「Aプロ」「Bプロ」って略し方だけで新鮮。ぱっと見「A Project」だと思ってしまいます。

*2:奥さんのエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー作品だそうです