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「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

ニュータウン入口 プレビュー(2)「準備公演」 / 遊園地再生事業団 @ 森下スタジオC

いま書いていて思ったけど、事故が多いこの頃、この団体名に時代が追いついちゃったのかしら。皮肉だわ。……なんかアエラみたいなこと言っちゃった?

作・演出:宮沢章夫
出演:
齊藤庸介、佐藤拓道、鎮西猛、鄭亜美、時田光洋、南波典子、二反田幸平、橋本和加子、三科喜代、山縣太一、杉浦千鶴子 上村聡 田中夢

「実験的な作品」なんてそんなの重いや、宮沢さん自身が面白いと思ったことを、面白いと思える方法でいろいろと試してみました、どうかしら?といった風情。リーディング公演での第1稿を、第2稿に改定する予定が間に合わずに第1稿のままで上演された今回の準備公演。さすが身体にこだわる*1宮沢さん、リーディング公演よりも「分からん……」と思わずすんなりと楽しみました。それでも分かったかと問うならば(問うならばー!)(筋少です)、わかってはいないんですけれど。
そして宮沢さんは山縣太一が大好きじゃないか!と、山縣太一好きの私としてはにんまりしつづけました。ひどいこと言っているかもしれないけど、彼だけ観るんでも楽しい。

ネタバレしまくりなので、今回の準備公演を観る方はもちろん、準備公演を観ずに本公演を観ようと思っている方も以下は読まないほうがいいです。たたみます。


演出にはチェルフィッチュを思わせるところがそこかしこに。オープニングの映像が録画されたものでなく、リアルタイムでスクリーンの裏で演じているのをカメラで映し出しているあたりなんて「エンジョイ」だなと思いましたし、これは設定自体に「ダンス」が出てくるからというのもありますが、いわゆるダンスよりも「動作」的なダンスがさりげにちりばめられていたり、おんなじやりとりが数回ちょと違うパターンで繰り返されたり。でも宮沢さんが単にまねっことしてやってみたってのではなくて、リスペクトを含めて宮沢さんの咀嚼を経由してこうなったというのが感じられて、そしてそれを御自身がかなり楽しんでやられてるのではないかしら、と思ってこっちもわくわくしました。
山縣太一まわりについていうと、山縣太一の身体に刺激を受けて、その刺激を宮沢さんが噛み砕いた結果としての演出が山縣太一にフィードバックされてるんじゃないかと思ったのですね。だから彼だけ観てるだけでもわくわくしちゃって大変でした。単にファンなだけだろ、って言われたら返す言葉もございませんけれど。えへへ。

本日も30分ほどのアフタートークつき。宮沢さんと司会の斉藤さんのトーク10分、役者3名を加えてのトーク10分、質疑応答10分という構成。だったらしです、司会の斉藤さんによると。もうこの方の司会がぐだぐだにもほどがあるというか、司会としてなりたっていなくて、宮沢さんに「本当に浅い話だよねー」と言われてしまうくらいの雑談っぷりでおっかしかった〜。
役者さんが最初の10分で座席周辺に入ってきていて、山縣さんがどっかり客席に座ったので「ああでないのか」とちょっとがっかりしていたら、直前に呼ばれてトークに出てました。ワタクシ、俄然前のめり。トークに参加されたのは鄭さん、山縣さん、佐藤さん。さっきまでとうってかわって中身ありまくりのトークが展開されててつい含み笑いです。

山縣氏は、公演を観にきた出演者の二反田さんのお友達に「チェルフィッチュみたいでしたね」と言われたらしいです。ヨーロッパの話とか聞きたい、と一瞬宮沢さんが振った後、「長くなるからブログで」っておっしゃってました。ぜひ読みたい*2。あと今回途中でスクリーン後ろでやってる動きは一緒にやってる方に山縣氏が振り付けしてたらしいです。あ、やっぱり意識は「振り付け」なんだ、アレ。「カナンだからこう(人文字の“C”。腕でつくるヤツね)、とか。カナンってこう(“C”)でいいのかなーとか言いながら」って話す山縣氏に「え、そんな単純なもんなんだ」って即座に返した宮沢さん。笑った。ホントだよ、それじゃ赤犬ちゃんじゃん。もしくはバイト君*3。それから、今回オーディションに応募したのは、彼の人生設計の中の一プランだったそうですよ。それをチェル的まわりくどさで語ってらっしゃいました。それから興味深かったのは、「宮沢さんの演出は岡田さんと比較すると、言葉がしっかりあるところが違う。だからといって宮沢さんの作品が言葉だけが強調されているわけでもないけど」ってことを、チェル的まわりくどさで語ってらっしゃいました。そしてチェルフィッチュの動きは適当にやってるんじゃなくて本当に全部振り付けです、ものすごくこまかいんです、ということをチェル的まわりくどさで語ってらっしゃいました。というか、さきほどからしつこく書いていますが、これを話している間の山縣氏の体がさ。手がぴらぴら動くのはもちろん足も動くは、ちょっと腰を浮かしてみたりするは。最後の発言、申し訳ないけどものすごく説得力なかったよ。普段からじゃん!てつっこんでたもの。

質疑応答で「最近の宮沢さんの作品は、今回のニュータウンといい、ある地域に特化しているなどの特徴がある。そういった発想はどのように得るものか」という趣旨の質問があり、それに答えている過程で宮沢さんが「結局人にあんまり興味がないのかもしれないなー」と発言されていたのが興味深かったです。だから人間の感情を描く作品にしあがらないかもしれない、といったことも仰ってて。前日の質問でちょっと宮沢さんがカチンときた質問があって*4、それが「この作品がどう社会に関わろうとしているのか分からない」という質問だったそうで。昨日は「じゃあ社会って何?」ってあたりで終わったそうなんですが、それも頭にあっての今日の回答だったのかもしれないですね。あくまでも予測ですけど。

ともあれ、本公演がめちゃくちゃ楽しみになりました。全く違うおもしろい変化をするんだろうな、って予感がぷんぷんするし。

*1:というかそれこそが演劇で出来ることと思っていらっしゃる>とトークでおっしゃってた

*2:だって昨日の急な坂スタジオでのヨーロッパ行脚報告会いけなかったし

*3:魂のキューンレコードの歌の振り付け

*4:「それで質問がでないようなきまず〜い雰囲気になっちゃったんですよね、昨日は。はい、質問どうぞ」て流れで始まった本日の質疑応答でした。できないよ……。