sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

狂想のユニオン / イキウメ @ 吉祥寺シアター

ko-moto2007-03-17

作・演出:前川知大
出演:
宇井タカシ/森下創/岩本幸子/池上ゆき/浜田信也/盛隆二/國重直也
津村知与支(モダンスイマーズ)/有川マコト(絶対王様)/羽鳥名美子(毛皮族)/瀬川亮

アイデンティティの崩壊を描いた……や、違うな、「あなたのアイデンティティ、何をよりどころにしていますか?」って聞かれたような。前川知大さんの作品は、イキウメ本公演「短篇集」とG-upプロデュースの「散歩する侵略者」の2本を観ていますが、この作品は「散歩する侵略者」に近かったです。もう設定だけで面白いのでとっても満足しました。前川さんの書いたSFノベルとか読みたい。

誰かの妄想によって作られた存在しない街」が舞台です。妄想によって出来上がっている世界だから、人によって見える景色すらも違うかもしれない。妄想によって出来上がっている世界だから、なりたい自分によって自分の過去をなくしてしまうことができる。それがお互いに幸せでぶつかりあわない妄想だったらいいけどね、って。

「気をつけろ、自分をチェックしろ」というキーワード。
「気がつけばこんなところに来てしまったなぁ」という気持ちとか、ひどく凹んだときに「死にたい」じゃなくて「消えてなくなりたい」と思ったりするようなそれこそ「過去を消してしまいたい」感覚とか、ちょっとカチンときたことされたときに「ふざけんな死ねバカ」と思うこととか、でもホントにそうなっちゃったらすごく困るよってすぐ心の中で否定してみたりだとか、気がついたら友人の中で思いもしなかったようなポジションにいたりとか、それが見えてない自分の視野の狭さやセルフプロデュースのへたっぴさにほとほとうんざりしたりとか。そんなことをふつふつふつふつと思い出し、劇場に入るときよりも格段に冷たくなってる空気の中に出て行ってふるえながらこのキーワードが身にしみてしょうがなかったのでした。

作品としてちょっと残念なのは、序盤から非常に「演劇しています!」という大きな演技であること。言葉のタメとか台詞回しがいかにもお芝居なのにちょっと鼻白んでしまうのです。「散歩する侵略者」ではそのあたりはあまり感じず、本公演ではそれをかなり感じてしまうので、恐らく演出があまり得意ではないんだろうなぁ、と(あくまでも好みの問題だとは思います)。なので、以前見逃して残念な思いをしていた、前川さん作の七里ガ浜オールスターズ公演のような公演を観にいくと思いっきり楽しめそうだなーとひしひし。

紙ちゃんと少路くんが来てました。よくあいますね、と言ってしまいそう。