sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

さようなら僕の小さな名声 / 五反田団 @ こまばアゴラ劇場

私の中でのこれまでの五反田団のイメージを軽やかに心地よく裏切ってくれちゃった作品。笑った笑った。五反田団で声出して笑うなんて思ってなかった。、といいつつも最後の方は前田節というか、いつも味わうような浮遊感らしきものもちょっぴり味わえるので、振り切れすぎてひいちゃうなんてことはなかったです。
公演は明日まで。毎度毎度、破格の¥1500。本日もぎゅうぎゅうでしたが、五反田団サイトにも「よっぽどのことがない限りご覧いただけると思います」と書いてあるので興味のある方はぜひ。あ、主宰・前田司郎さんのことをちょろっとでも知っていたほうが楽しめるとは思います。

作・演出:前田司郎
出演:
安倍健太郎青年団)、小河原康二(青年団)、立蔵葉子(青年団)、坊薗初菜(カムカムミニキーナ)、宮部純子、後藤飛鳥、中川幸子、西田麻耶、前田司郎、望月志津子
http://www.uranus.dti.ne.jp/~gotannda/

以下はネタバレしかしてないのでたたみます。



私小説」ならぬ「私演劇」ということで、主人公が「僕」すなわち前田さん。演じるのも前田さんでした。もう、自虐ネタっていうんでしょうか、笑っちゃいました。インタビューに来てるのにやったら失礼な編集者(後藤飛鳥さん)のとことか最強でした。「所詮マイナーなくせに芸術とか言うな死ね、って言われた」とか。お金のために書いてるんじゃない、という発言にくってかかって、最終的に前田さんが「だってお金はいるもん」ってすねるとことか。「あんた、この芝居の作者でしょ!あたしもあなたも、あなたが作り出したんじゃん!」てのもすごかったなー。あとはやっぱり岸田戯曲賞三越で買える岸田戯曲賞。2つも受賞したのは2回ノミネートされたのに受賞を逃したことを言ってるのかしら。最終的には海に投げ込まれてるし。俺の岸田戯曲賞につかまれ!岸田戯曲賞には浮力がなかった、とか。もうすごい。
「ぼくのおしゃれなシャツしらなーい?」あはははは。あと、むっちりみえっぱりっぽいのとか。「小道具協力」って書いてあったけどやっぱりあの花をついばむ鳥たち?望月さんはここでもまた這っていました。あの登場/退場の仕方がああつながってくるとは思わなかったな。

後半の蛇が世界を飲み込む展開はいつもの前田節っぽかったように思いました。「キャベツの類」をちょっと思い出したな。世界も自意識も飲み込んで吐き出さない。「自分を飲み込ませることも覚えてみろよ」のあたりはしみじみしました。
この作品、前田さんのみた夢がベースになっているそうですね。ひとつところを色んな場面に転換させたり、遠くにいるはずの人と当たり前に会話するあたりを思うと納得。

前回も今回も裏側に恋愛感情が存在しているように感じましたわ。前田さん、いい恋してらっしゃるのね(ご結婚されてるんでしたっけ。知らないのですが)。

次回はその岸田戯曲賞を逃したところの「いやむしろ忘れて草」だそうで。見逃したのを悔しく思っていたのでとっても嬉しいです。