sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

ゆきてかえらず〜稲上荘の寄るべない日々〜 / モダンスイマーズ @ 中野ザ・ポケット

(あらすじとキャスト。公式より)

東京のはずれにある古木造アパート稲上荘。
その一室に三十代半ばにして今も引き篭もっている男がいる。
男は何故、部屋を出ないのか。
入室してきた日。活気あふれた大学時代。
たくさんの仲間達。挫折。転落。
そして現在。十数年で出て行く者と去っていく者。
男は自分の人生を取り戻す事が出来るのか。
現代と過去が交錯しながら織りなすある男の年代記

作・演出:蓬莱竜太
出演:古山憲太郎、津村知与支、小椋毅、西條義将、西山聡(クロム舎)、成瀬功(マーク義理人情)、加藤亜矢子(モンゴルパーマ)、棚橋幸代、高橋麻理(扉座)、新田めぐみ、八十田勇一、六角精児(扉座

http://www.japan-pr.com/habanera/modern_swimmers/top.html

とてもよくできたいい話でした。作演出の方についても劇団についても全くの白紙の状態で観に行ったもので、ものすごくまっとうで幅広い年代にうけそうな作品であったことに少し驚きました。現に客席の年齢層も幅広かったです。やや高めかな?
もう主人公が最初から「あ〜あ〜あ〜」というイヤな奴なんだけど、趣味であれ、ある一時期芸術的活動をしていた人間にとっては、この主人公を自分にあてはめてしまうところはあるのではないかと思います。私は主人公の熱意と、自信と、それらのせいでやってしまう自己中心的な言動を見せられたとき、昔の自分に確かにあった「イヤな奴」な部分をぽつぽつと思い出し、恥ずかしいやら懐かしいやらでもじもじしてしまいました。客観的にみて言ってくれた忠告を後から「確かにそうなった」と思い出すあたり。
ラストの展開、ちらりと「泣かせようとしてやがるぜ」と思いながらもまんまとうるうる。本当に何をやるにしても周囲の人達の温かさを感じながらやっていきたいものです、と素直に思いました。そう、素直。だいじ。春の暖かい空気の中で、急に目の前がぱあっと明るく広がっていくような感覚をみせてくれた気持ちのいいラストでした。
「走れーーー!!」よりも先に主人公が自ら「走るぞ!」って言ってきたのがまた、ね。

劇中で使われていた音楽ではないのですが、帰り道に口ずさんだのはFishmansの「感謝(驚)」。