sugar-free

「おあずけとなった今年の夏のいい日を、きっと俺達はとり返そうぜ」

読了

さくら

さくら

1つの平凡な(?)家族の輝かしい過去とその崩壊と再生を、3人兄弟の真中である次男の視点から語るストーリー。学校1,2をあらそう人気者の兄と美人の妹にはさまれた次男はとてもニュートラルな存在で、だからこそ家族に起こったことが淡々と語られているように思いました。だからといって次男に何も起こらないかといえばそうでもないし。
彼らの幼少期から20歳くらいまでが描かれるので、その自体の自分の体験や感じたこととオーバーラップしまくり。なんだなんだ、私もなんだかんだあの頃から変わってないなー、なんて自分を振りかえってみたりして。

語り口がおだやかでリズムが心地よい文体でした。ひとつひとつのエピソードが後からじわじわと顔を出すのが、登場人物の20年ほどの人生をリアルにしていたように思います。「そんな昔のことが」急に頭をもたげてくる感覚とか。全体的におだやかにじんわり沁みながら読むことができました。タイトルにもなってるサクラの存在は各エピソードにおいて大きかったです。

ここからはネタバレっぽいのでたたみます。


ただラストはちょっと不満でした。お互いを思いやり、妹なんて兄に対する長期間の恋までしていたのに、お父さんが帰ってきてサクラをみんなで病院で連れていっただけで家族の絆が復活。え、と一瞬止まってしまいました。
「何もできないで別れを見ていた俺は高木ブー*1」な家族の葛藤が描かれることを予測してしまっていたもので……。
「兄の死は事故でなく自殺である」からこそちょっと。そうである割にはその死がストーリーの中で「家族の転機」という少し軽めの扱いになってしまっているのが悲しかったな。妹なんて「こうなってよかった」と思ったくらいの気持ちの持ち主だったのだから、兄の事故から「ギブアップ」までの彼女の「兄のための」言動を読み取りたかったです。
ページ数がたりなかったのかなぁ。それまでのエピソードの積み重ねとかはかなり好きだったのでもったいない。

んで下世話なところで、脳内キャスティング。妹はずっと柴○コウさん、弟は○瀬亮さんのイメージで読んでしまってました。兄は誰だろ。

*1:ごめんなさい、こないだからこの曲あたま回りっぱなしなの。